今回は「成果物を評価する際の基本であるQCD」についてお話しをします。
どんな仕事においても成果が求められます。だからみな頑張って成果を生み出そうと努力するのですが、自分では大きな成果を生み出したつもりでも結果的に周囲から評価されていなかった、なんてことのないようにしたいものです。そのため、成果を生み出す前に、そもそも成果はどんな観点で評価されるのかということを意識しておくことが大事です。
成果の評価基準は、仕事の種類や置かれている状況や評価者の考え方によっても変わりますが、多くの仕事で共通している観点としてQCDがあります。QCDとは、①品質(Quality)、②コスト(Cost)、③納期限(Delivery)の3つを指します。今回はこのQCDの留意点についてお話しします。
QCDを考える際の留意点
QCDとは、①品質(Quality)、②コスト(Cost)、③納期限(Delivery)の3つを指します。仕事の成果がこの3つの観点で評価されるということにはそれほど違和感はないでしょう。成果物は大前提として品質が悪ければ評価されないし、品質が高いからといってコストがかかり過ぎてもダメだし、提供されるまでの時間(納期)が遅すぎでも問題です。ともすると、QCDの3つの項目それぞれがすべて重要ですね、と短絡的に考えてしまいがちなのですが、現実はそんなに単純ではありません。品質はそこそこでいいからコストを安くすることが評価のポイントになることもあるし、コストはいくらかかっても構わないから納期最優先で一刻も早く提供することが評価の最重要ポイントになることもあります。
そこで留意点としてあげたいのは下記事項です。
【QCDの留意点】
①QCDそれぞれの項目を単独で考えないで、相対的なバランスの中で考えること。
②QCDの各項目は、それを実現するために必要となる時間(投入する時間)との関係でも考えておくこと
理想を言えば、QCDのすべてが完璧でありたいし、真面目な人ほどそれを実現しようと頑張ってしまいます。しかし、現実的には、すべてを完璧にするなんて無理だし、また状況によって何を優先すべきなのかは大きく変わってくるので、いつもいつもすべてを完璧にする必要もありません。それゆえQCDは相対的なバランスの中で考えることが重要なのですが、問題は何を優先させ、何を犠牲にするかという判断が難しいことです。さらにその見極めもさることながら、分かっていても実行するには勇気も要ります。
ここまでの説明を整理すると次の図解のようになります。とにかくポイントはQCDを相対的なバランスの中で考えることです。言い換えると、どういう背景・前提・状況のもとでそれを実現させるのかを考えるということです。第48回目の記事(情報には分母と分子がある。特に分母に注目すること)と同様な言い方をすれば、分母を意識するということです。
QCDのうち評価者が最も評価するポイントと度外視してよいと考えているポイントを事前に把握しておくこと
先ほどQCDは相対的なバランスの中で考えることが重要だが、問題は何を優先させ、何を犠牲にするかという判断が難しいと書きました。この点についての補足説明です。
QCDの優先順位を決定するにあたっては、当然ですが評価者が何を重視しているのかを見誤らないようにしなければなりません。ケースによってはこの点を評価者本人に直接確認することができるかもしれませんので、その場合には事前によくよく話し合って確認しておくことが大事です。また、なかには評価者自身があまり深く考えていない場合もありますが、その場合には積極的にこちらから優先順位を明示してあげましょう。
さらに重要なことは、何の出来を優先するなら何の出来は悪くても我慢してね、という合意を事前にしっかりと取り付けておくことです。そうしないと後から「品質はいいけど、値段が高すぎるんだよね」とか「納期は早くていいんだけど、お値段がちょっと高くないですか?」のように難癖をつけられかねません。そんなことになったら一生懸命頑張ったのにやりきれないです。明確な合意まではとれないにしても、こちらからあらかじめ「納期を優先するならコスト度外視でやりますからね」のような宣言はしておきましょう。事前にくぎを刺しておけば、後々の交渉もやりやすくなります。
今回はQCDの留意点について書きました。今後のご参考になれば嬉しいです。
今回のまとめ
◆自分の仕事の成果を正しく評価してもらうためには、QCDそれぞれの項目を単独で考えないで、相対的なバランスの中で考えること。
◆QCDの各項目は、それを実現するために必要となる時間(投入する時間)との関係でも考えておくこと
◆QCDのうち評価者が最も評価するポイントと度外視してよいと考えているポイントを事前に把握しておくこと
何かの作業をする前に、そもそも最終成果はどんな観点で評価されるのか、ゴールはどこにあるのかを確認しておくことが失敗を減らすコツの1つです。そのことに関連して、第33回目の記事(最初にアウトプット(成果物)を想定すること)も合わせてお読みください。
また今回のQCDを考える時だけでなく、いつでも相対的な関係性の中で物事を考えるクセをつけておくといいですよ。