今回はプレゼンをする際に留意すべき8つの項目「IKPOPECE」という話しをします
どんな仕事をするにしてもお客さんや上司に対し何かの説明や提案をしなければならないケースは付いて回ります。それらをプレゼンと呼ぶのかは意見が分かれるかもしれませんが、いずれにしても仕事をしていればプレゼンに類することをしなければいけない機会は数多くあるので、プレゼン上手(説明上手)であることに越したことはありません。そこで、今回はプレゼンをする際に留意すべき8つの項目「IKPOPECE(イクポぺス)」という話しをします。
プレゼンの際に留意すべき8つの項目「IKPOPECE(イクポぺス)」とは?
プレゼンをする際に留意して欲しい項目が8つあり、その8つの項目の頭文字が「IKPOPECE」なのですが、最初に概要を箇条書きすると次のとおりです。
◆プレゼンをする際は次の8つの項目を意識して作戦を考えると良いこと
◆その8つの項目の頭文字が「IKPOPECE」
◆「IKPOPECE」とは具体的に次の項目を指す。
I:Interest
K:knowledge
P:Purpose
O:Outline
P:Point
E:Example
C:Connections
E:Extensions
◆「IKPOPECE」は私の造語で私はこれを「イクポぺス」と呼んでいます。
◆「IKPOPECE」は、犬塚壮志氏の著書「頭のいい説明は型で決まる」で提唱されている「IKPOLET法」と学習評価モデルの「ICEアプローチ」を参考に考案しました。
以上をベースに今回の記事で言いたいことを要約すると次のようになります。
どんなタイプのプレゼンでも「IKPOPECE」という8つの項目を考慮して作戦を練っておくことをお勧めしたいというのが今回の記事で伝えたかったことです。
なお、今回紹介した「IKPOPECE」は、「頭のいい説明は型で決まる」(犬塚壮志)で提唱されている「IKPOLET法」をベースにしています。この「IKPOLET法」はとても参考になるので以下で紹介しておきます。
【ご参考】犬塚壮志氏が提唱する説明の型「IKPOLET法」
上述したように今回紹介したプレゼンで留意すべき8つの項目、すなわち「IKPOPECE」は、犬塚壮志氏が自著「頭のいい説明は型で決まる」の中で提唱している説明の型「IKPOLET法」をヒントにしています。犬塚壮志氏は元駿台予備学校化学科の人気講師だった方で、現在は企業向け研修講師などでご活躍中です。その犬塚氏が長年の経験の中から編み出した独自の説明術が「IKPOLET法」です。
「IKPOLET法」の詳細を知りたい方は犬塚氏の著書「頭のいい説明は型で決まる」をぜひお読みいただきたいのですが、ここでは参考としてそのエッセンスをご紹介しておきます。
「IKPOLET法」というのは次の7つのステップからなる説明方法であり、「IKPOLET」という言葉は各ステップの英語の頭文字になります。
Step1 興味をひく(Interest)
Step2 聴き手の持っている知識や認識にアクセスする(Knowledge)
Step3 目的を示す(Purpose)
Step4 大枠を見せる(Outline)
Step5 つなげる(Link)
Step6 具体化、事例、証拠を示す(Embodiment、Example、Evidence)
Step7 転移させる(Transfer)
「IKPOLET法」については、もう少し具体的な説明が下記ネット記事にコンパクトにまとまっています。併せて紹介しておきます。
「IKPOLET法」7つのステップ
STEP1 Interest(興味を引く)
相手のメリットやリスク、あるいは意外性や機密性を打ち出して興味関心を引く
興味を持っていない相手に、「この話は聞いておかないと!」と思わせる、最初の「つかみ」の段階。もっとも手っ取り早いのは「欲」もしくは「危機感」に訴えること。その情報を得ることによる「得」、得ないことによる「損」を、短い言葉で知らせるのが効果的。他、「~だと思われがちですが、実はこうなんです」といった意外性、「まだあまり知られていませんが……」などの秘密の開示も、相手をぐっと引きつける。
☆即効フレーズ
「○○ができると、××ができるようになります」
「よくよく考えると、○○って実は××だったの知ってた?」
「今から話すことは、あなたが初めてなんです」STEP2 Knowledge(相手の知識にアクセスする)
聴き手の持っている知識や認識にアクセスする
相手の知識の度合いを測る段階。話したいテーマに関する簡単な質問を通して、「聞いたことはある」「イメージは分かる」「内容も大まかに知っている」などの知識レベルや、それを「どう思っているか」を確認しよう。ここを押さえれば、相手にわかりやすい言葉・魅力を感じる言葉で説明できる。なお、ここでは事前リサーチも必須。相手の実績や背景、得意・不得意分野などをあらかじめ知っておくと対面後の確認もスムーズだ。
☆即効フレーズ
「○○って、聞いたことありますか?」
「○○について、知っていることを教えてもらってもいい?」STEP3 Purpose(目的を示す)
相手に分かってもらいたい内容、またはそれを理解する目的を伝える
「なんのためにこれが必要なのか」という意義や目的を明示する段階。 脳は、目的が判然としない情報には注意を払わない、という特徴を持つ。なんのために理解するのかを認識してこそ、相手は集中して耳を傾けてくれる。その際は、手段も併せて示すことが欠かせない。「この目的は○○なので、そのためには○○をわかってもらいたい」というふうに伝えることで、相手はここから始まる話を「聞く意味」を、より強く感じられる。
☆即効フレーズ
「そもそも○○の目的は、××なのです」
「○○のために××をわかってもらいたい。そのために今、△△(手段)をやっているんだ」STEP4 Outline(大枠を見せる)
これから説明するコンテンツの大枠を示し、そのテーマがどの位置にあるかを話す
全体像を俯瞰してもらう段階。これから行なう説明が、どのような全体像のなかのどの部分にあたるかを示すことで、相手は自分の立ち位置を知ることができる。方法は大きく分けて二つ。一分野の中の「この部分」、という示し方と、時系列の流れの中の「この段階」、という示し方ができる。たとえば「Outlineとは、『IKPOLET法』という、説明の黄金フォーマットの一段階です。7ステップのうち、4ステップ目にあたります」は後者の典型例だ。
☆即効フレーズ
「まず、全体像の確認です」
「この○○(部分)は、××(全体)の中のここに位置しています」
「全体の流れの中で、○○はこの辺りです」STEP5 Link(つなげる)
因果関係や仕組みなど、物事の「つながり」を説明する
相手の知識に、こちらの情報を連結させて「理解」につなげる段階。その方法は主に4つある。「こうなった理由はそもそも」といった因果関係の説明、「こういう仕組みになっています」というメカニズムの開示、複数の例を挙げつつ示す「この場合は必ずこうなる」という法則性の提示、「すでにご存じの○○は○○にも当てはまります」といった既存の知識との連結。相手が納得の表情を見せるかどうか、最大の勝負所と言える。
☆即効フレーズ
「○○(結果)が起こった原因は~」
「○○のように仕掛けたから、××になったのです」
「そもそも、この○○の由来は~」STEP6 Embodiment, Example, Evidence(具体化、事例、証拠を示す)
抽象的な内容を説明するときは、具体化や証拠の提示をする
より深い理解へと相手を導くには、具体性が必要だ。抽象度の高い話を「○○に例えるなら」と比喩を使って目に見える形に落とし込んだり、「過去の例で言いますと」「実際に起こった話なのですが」などの事実を例示したりするのが効果的だ。真偽が定かでないものに関しても、データや実例を提示して証拠を示すことが必要だ。もちろん、提示する具体例が適切であることが必須。テーマに適った例であってこそ、確実な理解と納得を得られる。
☆即効フレーズ
「具体的に言うと~」
「例えば~」
「○○という証拠があります」STEP7 Transfer(転移させる)
(出典)「「興味がない人」すら惹きつける!人気講師の説明法」犬塚壮志(士教育代表取締役)「IKPOLET法」7つのステップ より
説明しているものがその場面だけにとどまらず、他でも使えることを示す
「理解」の度合いは、「一応わかった」という表面的習得から、「人に説明できる」「他のシーンにも活用できる」レベルまでさまざま。ハイレベルな理解にまで導ければ、その説明は相手にとって大きな価値を持つ。「ここまでのお話は、この場面でも活用できます」「この仕組みを、○○に置き換えますと……」といった応用例を話すと、理解が深まるだけでなく、相手の発想力や、ビジネスチャンスを広げることにもつながるだろう。
☆即効フレーズ
「この考え方を○○に当てはめてみると~」
「あの時説明した○○の考え方は、実はここでも使えるんだよ」
ところで、犬塚氏の提唱する「IKPOLET(イクポレット)法」のままでも良かったのですが、私自身は「Step5 つなげる(Link)」と「Step7 転移させる(Transfer)」については学習評価モデル「ICEアプローチ」の2番目の「C:Connections」と3番目の「E:Extensions」とした方が納得感があると考えています。そのため、この2つは置き換えて利用しています。なお「ICEアプローチ」については第53回目記事(学習評価のための「ICEモデル」は仕事でも大いに参考になる)で書きましたのでご参照ください。
いずれにしても、犬塚氏の提唱する「IKPOLET(イクポレット)法」と私の「IKPOPECE」との関係を整理すると次のようになります。
なおご参考ですが、「⑤ポイント」に関しては第44回目記事(説明・プレゼンで使える4つのフレームワーク)でも関連した内容を書きました。ご関心があればぜひお読みください。
犬塚氏が提唱する「IKPOLET法」にしろ、私が活用している「IKPOPECE」にしろ、プレゼンをする際に少しでも皆様のお役に立てば嬉しいです。
今回のまとめ
◆プレゼンをする際には次の8つの項目、すなわち「IKPOPECE」を意識して作戦を考えると良い。
おすすめ図書
「東大院生が7つの型で教える 神わかり! 頭のいい説明力」(犬塚壮志)
記事本文でもご紹介した説明の型「IKPOLET法」について詳細に説明されている本です。もともと本書は「東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる」という単行本として出版されたものですが、改題し加筆・修正のうえ文庫本としても出版されています。内容的には単行本で読んでも文庫本で読んでも大差ないので、どちらを読んでも構いません。
この本では、分かりやすい説明をするために説明者に求められるのは頭のよさとか才能とかではなく、単に説明スキルを身につけているかどうかということを教えてくれます。著者が長年の実践経験などから導き出した説明の方法論は一度理解してしまえば誰でも活用可能です。本来であればこのようなノウハウを義務教育においてきちんとしたカリキュラムの一環で学ぶ機会があれば一番いいのですが、おそらく現状は、各自が説明上手な人のやり方を見てそれを盗み応用するといった形で身につけていると考えられます。それをこの本一冊を買って学べば、本代と読む時間だけで著者の豊富な経験とノウハウが手に入るわけで、そう考えるとお値打ちです。学生さんや新社会人など若い方にぜひ読んでもらいたい1冊です。
同じテーマでプレゼンするにしても、聴衆・読者の興味や知識レベルによって作戦が大きく変わります。そのためプレゼンでは、事前に聴衆・読者に関する情報を集めておくことがとても重要です。