「WHY NOT?」も考える #59

分析力・問題解決力

今回は「WHY NOT?」も考えるというお話しします

 人生はミスや失敗の連続です。「なんであんなミスをしたのだろう」とか「今回もまた試合に負けてしまった」とか、そんなことは日常茶飯事で、そのたびに落ち込んでしまうのですが、クヨクヨばかりはしてられません。その都度その都度きちんと振り返り、次回に同様の失敗をしないように教訓としたうえで前に進んでいくことが大事です。その振り返りの際に有効だと言われるのは「なぜ(WHY)を突き詰めて考えること」です。例えば、改善活動で知られるトヨタの「なぜ(WHY)を5回繰り返す」は有名です。このような「なぜなぜ分析」で原因を突きとめることは重要なのですが、問題は真の原因を突き止めることは言うほど簡単ではないということです。
 そこで提案したいのが今回の「WHY NOT ?」です。「WHY NOT ?」で考えるとは、簡単に言えば、ものの見方・考え方を通常と逆にして発想を広げようとすることです。こうすることで硬直した思考が柔軟になります。
 それでは以下で詳細をご説明します。

「WHY NOT ?」を考えるというのはどういうことか?

 トヨタ方式の「なぜ(WHY)を5回繰り返す」のように「なぜ(WHY)」と考えることの重要性を強調する人は多いのですが、「WHY NOT?」の重要性を繰り返し説いている人は私の知る限り野村克也氏をおいて他には思い当たりません。「WHY NOT?」の考え方を理解するうえでも野村氏の次の文章はぜひお読みいただきたく、まずは紹介させてください。異なる3冊の本から紹介します。

 上記を踏まえて「WHY NOT ?」を考えることの意味を私なりに要約すると次のようになります。

 「WHY?」だけでなく、「WHY NOT ?」もセットで考えなければ原因分析や対策立案の検討として十分ではないということです。

 今回のブログでは「WHY NOT ?」の重要性を認識したうえで各自が今後実践してもらえれば目的達成です。お忙しい方はここまでで読むのをやめて構いません。しかしながら、「WHY NOT ?」を考えることが重要だとしても具体的にどんなやり方で考えればいいのかとの疑問がある方もいるかもしれません。そんな方のために私が実践している3つのパターンを以下で参考として紹介します。

「WHY NOT ?」を考えるときの3つのパターン

 「WHY NOT ?」で考えるやり方については、基本的には次の3つのパターンがあると考えています。

 上記3つのパターンの考え方をイメージしてもらうために簡単な例で表にしてみました。

 ちなみに無条件で真反対を考えるというのは「WHY NOT ?」だけではなく、何かを発想するときに覚えておくといいコツの一つです。この点に関して世界的に有名な数学者の広中氏は次のように書いています。

 上記3つのパターンはあくまでも「WHY NOT ?」を考える時の参考にすぎず、大事なことは、野村監督も指摘しているように、「他にも気がついていない問題点があるのでないか?」という疑問を持つことです。ポイントは様々な観点から多様な問題意識を持つことですが、「問題意識をもつ」というスローガンだけでは具体的な実践につながらないので、具体的な方法論の1つとして「WHY NOT ?」で考えることを提唱しているのです。

コーヒーブレイク

【「WHY NOT ?」のように否定表現(NOT)で考えることの意味】
 今回の記事本文で書いたとおり「WHY NOT ?」で考える意味は、様々な観点から多様な問題意識を持つことにあります。しかし、なぜ「WHY NOT ?」で考えると「問題意識をもつ」ことにつながるのでしょうか?
 この点に関しては、第43回目の記事(プロは「(あって当然なのに)そこに無いものは何か?」に注目する)でも書いた「否定表現」が本来持っている意味合いについて改めて思い出して欲しいのです。
 シャーロック・ホームズが「あの晩、なぜ犬は吠えなかったのか?」という「WHY NOT ?」を思いついたのは、「不審者がいれば犬は吠えるはずだ」という問題意識があったからです。つまり、「NOT」という「否定表現」は本来問題意識を持つ人にしか思い浮かばないものなのです。言い換えると、ホームズのようなもともと問題意識の固まりのような人に対しては「WHY NOT ?」で考えようなどとアドバイスをしなくても「WHY NOT ?」で考えるクセがついています。
 問題は、ホームズと違ってグレゴリー警部のような人(私も含めて)です。普段から問題意識を高く持ってアンテナを張っている人でない限り、自覚的に「WHY NOT ?」で考えるように意識しておく必要があります。そうしないといつまでたっても問題意識なんて持たないからです。でも逆に言えば、否定表現で考えるクセさえつければ、才能の如何にかかわらず問題意識を持つのは簡単だということです。そのような理由から、今回の記事で説明した「WHY NOT ?」以外でも、ぜひ否定表現で考えることをお勧めします。
 なお、否定表現で考えるという文脈で言えば、「WHAT NOT ?(何でないか?)」と考えることも大事です。つまり、「A」のことについて考えたいのなら「Aでないもの(=非A)」は何か?を考えるような思考方法です。この点については8回目の記事(実態を問う質問(定義から始める))でも説明しました。ご関心があれば合わせてお読みください。

今回のまとめ

◆「WHY」を考えるだけでは十分ではなく「WHY NOT ?」もセットで考えるべき。
◆「WHY NOT ?」を考える時には次の3つのパターンで考えるといい。
①無条件で真反対のことを考える
②自分の採用しなかった選択肢(自分がしなかったこと)を考える
③相手の立場になって考える(主語を変えて考える)

おすすめ図書

「負けかたの極意」(野村克也)

 上記本は26回目の記事(社会を生き抜く「段取り力」)でも推薦した本です。この時には段取力に関する本として紹介していましたが、今回は「WHY NOT?」という観点で推薦する次第です。とはいえ、本書の中で書かれている「WHY NOT?」に関するエッセンスは本ブログ本文でご紹介しました。したがって、「WHY NOT?」を学ぶためだけであればわざわざ本書を1冊読まなくても本ブログ本文の引用箇所だけ読んでおけば足ります。ただ、本書はそれ以外にも多くの学びを与えてくれます。もしまだお読みでない方にはぜひ一読をお勧めします。

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ハットさん
ハットさん

「WHY」を考える時には「WHY NOT?」の観点も忘れずに。

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