学習評価のための「ICEモデル」は仕事でも大いに参考になる #53

質問力・コメント力

今回は学習評価のための「ICEモデル」が仕事でも大いに参考になるという話しをします

 教育現場で活用されている学習評価モデルとして「ICE(アイス)モデル」というフレームワークがあります。教育関係の仕事にでも従事していない限りなかなか見聞きすることはないのですが、私はたまたま読んだ本で知りました。学習評価モデルですから本来は学校などの教育現場で活用されるものですが、仕事でも大いに役に立つ考え方で私は参考にしています。
 そこで今回の記事では、学習評価モデルとしての「ICE(アイス)モデル」がどのような点で仕事の参考になるのかを紹介させてください。

「ICE(アイス)モデル」とはどんなモデルか?

 「ICE(アイス)モデル」とは、カナダで開発された学習・評価のためのモデルで、Ideas(考え・知識)・Connections(つながり)・Extensions(応用)の3段階で学びのレベルを評価しようとするモデルです。

(注) 上記図は「『問う力』が最強の思考ツールである」(井澤友郭、吉岡太郎)を参考にハットさんが作成した。

 ICEモデルは学習・評価のためのモデルであり、教育現場ではこのモデルを具体的にどのよう活用して学習・評価を進めるのかということが重要な関心事になります。しかしながら、今回の記事ではこの点には一切触れません。
 私の関心は、実務家として仕事をしていくうえでこのモデルの考え方が役に立つのかどうかということです。結論から言うと、ICEモデルは、仕事をするうえでのものの考え方が大変参考になります。
 以下では、ICEモデルがものを考える時にどのような点で参考になるのかをご紹介します。

ICEモデルがものを考える時にどのように参考になるのか?

 私が仕事でものを考える時に大切にしていることがあります。それが次の3つです。
 ①言葉の意味に厳密になること
 ②関係性を意識すること
 ③広がりの範囲と影響の程度を考えること

 上記①は言い方を変えると、概念の境界線に厳密になるということであり、論理的な考え方をするうえで必須です。議論を厳密に進めようとすれば「定義」からスタートしないわけにはいきません。
 定義(各要素の概念の範囲)が明確になったら、その次に考えるべきは各要素間の関係性です。要素間の関係性を解明しなければ、ある出来事を構造化して理解することなど到底できません。その出来事がなぜ起きたのか、そのメカニズムはどうなっているのか、今後どうなるのか、その本質は何だったのか、など深く検討しようとすれば、各要素間の関係性が分からなければ判断のしようがないのです。
 また、各要素間の関係性が解明できたとしても、それが現在どのような広がりをもっているのか、あるいは現在は認められなくても将来的には広がりをもつのかどうか、その広がりはどの程度の範囲に及ぶのか、全く関係ないように見える領域においても似たようなことが起きているのか、または今後起きるのかなど、広がり(影響度)に関する視点も忘れてはなりません。広がり(影響度)は、重要性や深刻度を判断するうえでの決定的な判断材料となる可能性があるからです。
 いずれにしても、上記①から③は仕事でものを考える時に大切にすべき事項ですが、それは下記のようにまさにICEモデルの考え方と同じです。

(注) ICEモデルの内容ついては「『問う力』が最強の思考ツールである」(井澤友郭、吉岡太郎)を参考にした。

 何かを考えたり、他人の主張に質問をしたり、ある論点についてプレゼンをしたりするときには、上記図を頭に思い浮かべて、自分または議論相手の考察のレベルがどのレベルにあるのかを評価してみること。これが今回の記事でお伝えしたかった内容です。

(補足情報)今回の説明と過去記事の説明との関係性

 ここまでの説明を要約すると次の2点になります。
1)ICEモデルは、何かを考えたり、他人の主張に質問をしたり、ある論点についてプレゼンをしたりするときに、とても重要な次の3つのことを思い起こさせてくれる。
 ①言葉の意味に厳密になること
 ②関係性を意識すること
 ③広がりの範囲と影響の程度を考えること
2)だから、ものを考える際には、いつもICEモデルの図を頭に思い描いて、考察レベルを点検するとよいこと

 今回の記事でお伝えしたかったことは以上です。

 ここからは補足情報なのですが、実は今回お伝えした上記①~③については、内容的にはすでに下記の過去記事で説明しています(もちろんICEモデルを使って説明していないし、説明の仕方もレベルも今回とは異なりますが…)。理解を深めるためにぜひ下記記事もご覧ください。
 ◆第8回目の記事(実態を問う質問(定義から始める))
 ◆第9回目の記事(実態を問う質問(何が起きたのかを問う))
 ◆第11回目の記事(実態を問う質問(影響を問う))
 ◆第13回目の記事(分析開始前に「大きさの程度と重要度」を考えること)
 ◆第51回目の記事(「論理の力」を身につけたい人にお勧めしたい本 野矢茂樹「論理トレーニング」)

 また、今回のICEモデルの図は、第8回目第9回目の記事で記載した次の「実態を問う質問」図と意図していることは同じであることを補足しておきます。

第8回目と第9回目の記事で記載した「実態を問う質問」図

 どんな話題について議論をしていても、上記「実態を問う質問」図を思い浮かべることさえできればポイントをついた質問が容易になるのですが、仮にこの図を忘れてしまった場合には、シンプルにICEモデルの図を意識してみてください。それだけでも議論の核心に迫る可能性が高まります。

今回のまとめ

◆学習評価モデルとして活用されている「ICEモデル」は、仕事においてとても参考になる。
◆具体的には、何かを考えたり、他人の主張に質問をしたり、ある論点についてプレゼンをしたりするときに、とても重要な次の3つのことを思い起こさせてくれる。
 ①言葉の意味に厳密になること
 ②関係性を意識すること
 ③広がりの範囲と影響の程度を考えること
◆だから、ものを考える際には、いつもICEモデルの図を頭に思い描いて、考察レベルを点検するとよいこと

ハットさん
ハットさん

ちなみに、ICEモデルが実際の学習・評価の場でどのように活用されているのかを知りたい方は、ネットで「ICEモデル」とか「ICEアプローチ」と検索してみてください。教育現場での具体的事例がたくさん出てきますよ。

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