名著「失敗の本質」から学ぶ(常に複数の選択肢を用意しておけ)(全9回の5回目) #78

マネジメント

今回は「『失敗の本質』から学ぶ」の第5回目で「常に複数の選択肢を用意しておけ」という話しをします。

 第74回から「『失敗の本質』から学ぶ」というテーマで連載しており、私が「失敗の本質」を読んで肝に銘じていること(8つ)を順にご紹介しています。今回は4番目「常に複数の選択肢を用意しておけ」についてお話しします。

今回お伝えしたいことを最初に要約すると…

 今回お伝えしたいことを最初に要約すると、「失敗の本質」では日本軍の失敗要因として、次の点を指摘しています。
◆戦略オプションが限定されていて極端にいえばワン・パターンの作戦の繰り返し
◆背景には、視野の狭小化・想像力の貧困化・思考の硬直化といった病理現象があり
◆結果として戦略の進歩も見られない

 図にすると次のとおりです。

 以下では「失敗の本質」で書かれている具体的な指摘のいくつかを紹介します。

「失敗の本質」で指摘されている「制約された戦略オプションの実態」

 日本軍の失敗要因として、戦略オプションが狭く、極端にいえば、作戦がワン・パターンであったことがこれでもかこれでもかというくらい何回にもわたって繰り返し指摘されています。その一端を感じ取ってもらいたく、しつこくて申し訳ないのですが、いくつも紹介させてください。

 あまりにも似たような内容の繰り返しでうんざりしたかもしれません。それにしても日本軍は考えることを放棄していたとしか思えません。実際には合理的に考えていた人はいたはずですが、そういう真っ当な人の意見はある時期から却下されていたと推測されます。なおご参考ですが、大本営情報参謀だった堀栄三氏の「情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記」を読むと、堀氏が太平洋戦争中に冷静に情報を分析し米軍の作戦を次々と予測的中させるものの、そもそも堀氏の分析が相手にもされず生かされないまま埋もれていく様子がよく分かります。

教訓としては「常に複数の選択肢を用意しておくこと」

 結論として、視野狭窄・想像力の貧困化・思考の硬直化という病理現象が進むと戦略オプションはどんどん限定されていき、最後にはワン・パターンに陥るということです。このような日本軍の失敗と同じ轍を踏まないための教訓としては「常に複数の選択肢を用意しておくこと」が大事です。こんなことは言われなくても分かっているのですが、ついつい面倒くさいとか、予算がないとか、そこまでやらなくても大丈夫だろうなど、楽観的な誘惑に負けてしまうことが多いと感じています。平時ならそれでも実害ないのかもしれませんが、有事(危機)に臨む責任ある立場にある人はそれではいけません。危機管理のプロである佐々氏の次の言葉を常に肝に銘じておくべきです。

今回のまとめ

◆常に複数の選択肢を用意しておくこと
◆ワン・パターンでは想定外の事態に対応できない
◆日本軍の失敗を教訓にしろ(下記の図を参照)

ハットさん
ハットさん

このシリーズはあと4回続きます。

今回までは戦略面での失敗要因でしたが、次回からは組織面での失敗要因に関して説明します。

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