「マッキンゼーの7S」で大局的に考える #22

マネジメント

今回のテーマは「マッキンゼーの7S」です

 マッキンゼーで50年以上も使われている有名な「マッキンゼーの7S」というフレームワークがあります。私にとって、長年仕事でマネジメントを考える際に最も役に立った考え方の一つがこの「マッキンゼーの7S」です。もしかしたら私が会計士というそれほど一般的ではない立場で仕事をしていたから「マッキンゼーの7S」が役に立ったのだろうと思った方もいるかもしれません。しかし、そんなことは全くありません。組織の中のリーダー的な立場にある全ての人に役に立つ考え方です。一度理解しておくと実に重宝すること請け合いです。

「マッキンゼーの7S」とは

 「マッキンゼーの7S」とは、結果として組織がうまく機能するための要件は何か、という観点で考えた結果、次の7つの要素に整理できるとする考え方です。簡単に言えば、組織がうまく機能するためには、次の7つの要素が整っていることが大事だということです。
①戦略(Strategy)
②組織(Structure)
③システム・仕組み(Systems)
④価値観(Shared Value)
⑤スタイル・行動様式(Style)
⑥人材(Staff)
⑦スキル(Skills)

私は自分が理解しやすいように次のような図にして考えることにしています。

「経営参謀の発想法」(後正武)の図をヒントにハットさんが改変

簡単な例で説明すると

 「マッキンゼーの7S」は、コンサルタントの人が書いた本ではたいてい紹介されているので目にしたことはあるかもしれません。しかし、どのように活用すればいいのか何となくイメージがわかない方もいるでしょう。そこで、簡単な例で考え方を説明します。

 もしあなたがサッカーチームの監督に任命され、チームの再建を託されたとしましょう。誰でも自分が監督になったらこのチームをどんなチームにしたいという理想があります。その理想をイメージしながら、例えば次のようなことを考えるはずです。

①毎年優勝を狙えるような常勝チームにしたい。【戦略】
②でも勝敗だけにこだわるのではなくて、チーム全員の人間力を高めその姿勢も含めて観客に感動を与えたい。【価値観】
③試合では常に攻撃的なサッカーを貫きたい。【スタイル・行動様式】
④理想を実現するには、現状のメンバーでは無理で、チーム編成やフォーメーションから見直す必要がある。【組織】
⑤従来は攻撃的なスタイルを評価していなかったが、これからはスタイルを変える。だから、選手の評価基準・育成方針・スカウトの体制なども見直さなければならない。【システム・仕組み】
⑥目指すサッカーを体現するためにはどんなタイプの選手が必要か明確にする。【人材】
⑦どんなスキルを重点に高めていく必要があるのかも見直そう。【スキル】

 こんな感じで考えることがまさに7Sで考えることなのです。7Sの考え方を理解してもらうために、架空のたとえ話で説明しましたが、何となくイメージできればそれで十分です。

7Sを考えるうえで重要なこと

 先ほどは簡単な例で説明しましたが、日常の仕事でも考え方は同じです。あなたが課長でも、プロジェクトリーダーでも、事業部長でも、社長でも、自分が率いているチーム全体を機能させようとしたら、知らず知らずのうちに7Sの要素を考えているはずです。7Sのように整理した状態で意識的に考えていなかったかもしれませんが、それぞれの要素については考えています。そういう意味で、7Sのそれぞれの要素そのものには目新しさを感じないかもしれません。

 ただ、7Sのフレームワークが優秀なのは、7Sの要素を単発で考えさせるのではなく、有機的な相互関係を踏まえた全体像として考えさせるところです。より広い視野から大局的に考えることができるようになるところが7Sの素晴らしいところです。言い換えれば、7Sで考える時に重要なのは全体感の中でとらえることです。決して1つ1つの要素を単発で考えることのないよう注意したいものです。

 14回目の記事(分析における「全体の把握と絞り込み」)17回目の記事(分析のゴール(メカニズムを明らかにして構造化する))で説明したように、全体との関係性や全体の構造を理解することは分析をする上で必須ですが、この7Sのフレームワークはまさにこの観点での見方を提供してくれるのです。
 今後ぜひ7Sのフレームワークをご活用ください。

コーヒーブレイク

主に会計士の読者を想定したアドバイス(統制環境と7S)
 ここからは主に会計監査に従事している若手会計士の方を想定して書きます。会計士の世界を生き抜いてきた先輩としてアドバイスをさせてください。アドバイスをしたいのは内部統制の構成要素の1つである統制環境と7Sの関連についてです。
 内部統制監査を担当している会計士にとっては、被監査会社の内部統制のレベルがどの程度にあるのかは常に関心があるところであり、個々の業務処理レベルの統制活動に対しては事あるごとに目を光らせてチェックをしています。しかし、個々の業務処理レベルの統制活動よりもずっと大切なのが内部統制全体の土台になる統制環境です。
 そんなことは言われなくてもどんな会計士でも理解していることですが、いざ実務で統制環境について評価するとなると、形式的な評価になりがちだと感じています。なぜなら、統制環境の中には「経営方針及び経営戦略」のように内部統制の観点で見ると具体的に評価しにくいものがあるからです。統制環境については「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、例示として次の事項が挙げられています。
① 誠実性及び倫理観
② 経営者の意向及び姿勢 
③ 経営方針及び経営戦略
④ 取締役会及び監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)の有する機能
⑤ 組織構造及び慣行
⑥ 権限及び職責
⑦ 人的資源に対する方針と管理

 これらは概念としては理解できるのですが、経営に関する経験値が乏しいと具体的にイメージしにくい項目があるのも確かです。
 そこで、ここからがアドバイスです。統制環境を評価するときには、ぜひ7Sの観点も頭にイメージしてみてください。統制環境の各項目をよく見ると、7Sの各要素と密接に関連していることが分かります。7Sをイメージしながら統制環境を考えてみると、「経営方針及び経営戦略」「組織構造及び慣行」「人的資源に対する方針と管理」など今まで無味乾燥に思われた項目がかなり具体的に想像できるようになります。そうなる統制環境を見る目が肥えていきます。
 以上、会計士さんの読者に向けた内部統制を評価する際のワンポイントアドバイスでした。

今回のまとめ

あなたが組織を束ねるリーダ的な立場で仕事をするのなら、組織全体をより機能させるために7Sの観点で大局的に考えるクセをつけましょう。

ハットさん
ハットさん

マッキンゼーの7Sについてはネットで検索すると解説記事がたくさん出てきます。もう少し詳しく知りたい方はぜひ調べてみてください。

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