正解探しをする悪い習慣は捨て去ろう #108

分析力・問題解決力

今回は「正解探しをする悪い習慣は捨て去ろう」という話しをします。

 学生の頃は誰しも経験のあることですが、専攻している教科について、たいていの場合なにがしかの試験があります。試験があれば当然ですが、試験問題に対する正解も存在します。しかし社会人になって痛感するのですが、世の中で直面するほとんどの問題については正解がありません。したがって、本記事では「正解を求めて何かの文献などを探す」とか「記憶を頼りに正解を思い出す」といった悪い癖は早い段階で捨て去り、その代わりに「前提条件を色々と想定して選択肢をひねり出す」という考え方を徹底しましょうと提案したいのです。

今回の記事で伝えたいことを先に要約すると…

 今回の記事で言いたいことはシンプルです。要約すると次のようになります。

 今回の記事で言いたいことの骨子は上記のとおりです。以下では私の考えを補足したり、読んで欲しい文献の引用を紹介しますが、時間がない人はここで読むのを止めても何ら問題ありません。

正解探しの習慣が抜けない背景

 今回の記事では「社会人になったら正解探しをするような思考態度はやめようね」と言いたいのですが、実際にはそんなに簡単なことではありません。なぜなら学生の頃から正解探しをするという訓練を何度も何度も繰り返した結果、条件反射的に正解探しをする癖が身についてしまっているからです。この点について大前研一氏なども下記のように書いています。3冊の本から紹介します。

 ちなみにかなり古い本で恐縮ですが、堺屋太一氏は「組織の盛衰」という有名な本の中で試験(受験)の弊害について次のように書いています。

 この本は30年以上も前に出版された本なのですが、堺屋太一氏の指摘は現在でも頷ける点が多いです。

 なお、堺屋太一氏が言う試験の第二の特徴、すなわち「易しい問題、自分が答えやすい問題から解」くということに関しては悪いことばかりではありません。優先順位をつけることの重要性を学ぶという点ではメリットも大きいと考えます。段取りを考えるうえでは優先順位はとても大切なことなのです。このことに関しては第26回記事(社会を生き抜く「段取り力」)で説明しています。ご関心があればどうぞ。

正解探しの代わりに何をすればいいのか?

 上記で紹介した石川氏の記述のように「最近の学校教育は『正解のない問いを探究する』方向に変わってきてい」るにしても、具体的にどんな思考態度に変えればいいのでしょうか。この点に関しては、大前研一氏が著書で書いているマッキンゼーの採用試験が大いに参考になります。少し長くて恐縮なのですが、ぜひここで紹介させてください。

 上記で大前研一氏は「自分で簡単に答えられるような問題なら、なにも高いお金を払ってまで外部のコンサルタントに頼みはしない」と書いていますが、今ならAIに質問すれば正確かつ迅速に回答を提示してくれます。そのため、AIに相談すれば事足りるような問題と回答ならクライアントはますます高いお金をコンサルタントに払うことはありません。だからこそ自分なりに考えるという思考態度を身につけることの方が意味があるのです。

 ところで、身につけるべき思考態度とは、自分で前提条件を考え出し、その前提条件ごとに起こり得る事態を想定するということです。このことを大前研一氏は色々な著作の中で「常に『What、If…?』と考えよ」と提案しています。例えば次のような記述です。

 ちなみに、「What、If…?」という思考については大前研一氏に有名な著作「企業参謀」に次の記述があります。ぜひこの機会にお読みいただきたくご紹介させてください。

 結局のところまず第一に前提条件を考えることが大事なのですが、そうするためには想像力が問われます。また、リスク対策を考えるときにも言えることですが、「何年後に、どんな状況になって、何に対して、どんな影響があるんでしたっけ?」、すなわち「What、If・・・?」を具体的に考えるためには相当な経験値も必要です。とにかく普段から意識的に想像力を駆使する練習をしたり、地道に経験を重ねたり見聞を広めておくしか方法はありません。

コーヒーブレイク

【正解探しを捨て「What、If・・・?」で考えられるようになるまで何年くらいかかるか?】
 記事本文の中にもあるように日本の場合、社会人になりたての頃は圧倒的に正解探しの癖が身についています。そのため、できる限り早くこのような思考態度を打破し、「What、If・・・?」で考えられるようになることが必要です。では「できる限り早く」という期間は具体的にどれくらいなのでしょうか。私は公認会計士として大手監査法人に34年間勤務しましたが、その時の経験に照らして言えば、一般的に5年くらいかかる印象です。会計士の場合、3年目でやっと正解探しの思考態度を打破するのですが、その頃に終了考査(私の頃は「三次試験」だった)という試験を受けるため、せっかく打破した正解探しの悪癖が復活してしまうのです。その後、前提条件と選択肢を考えるという思考態度に落ち着くまで2年くらいかかります。結局のところ合計で5年かかるイメージです。言えることは、日々努力を重ねて何年もかけなければいけないということです。
 参考までに、大前研一氏ですら次のように書いています。

 大前研一氏ですら「知識の詰め込みを重視し、答えは図書館にあると教える日本の学校教育に染まっていた」し、調べるのではなく自分の頭で考えろと言う教授の言葉を神の啓示のように聞いたわけですから、私たちのような凡人はひたすら努力するしかありません。
 ちなみに、私は2011年から大学院でも授業を担当しています。ワークショップスタイルの授業で毎回テーマごとにグループディスカッションをし、その結果を発表してもらうのですが、試験を課すことはありません。また、ある時から正解と称して学生さんに私が説明をしたり、逆に学生さんに対して正解を求めることもなくなりました。なぜなら「正解はない。答えは自分で考え出すもの」という思考態度を少しでも体感して欲しいからです。

今回のまとめ

◆「問い(問題)」に対して「正解」があると考える習慣(悪癖)は捨て去ろう。
◆「解」は探すものではなく、自分で考えるもの。
◆考える時には「What、If・・・?」思考が大事。
◆「What、If・・・?」思考とは、様々な前提条件をもとに選択肢を考えること

おすすめ図書

「企業参謀―戦略的思考とはなにか」(大前研一)

 大前研一氏のあまりにも有名な本なので、本ブログの読者であればすでにお読みかもしれません。もともとは1975年と1977年に出版された2冊の本を1冊にまとめて新装版としたものですが、その新装版ですら出版されたのは1999年です。大前研一氏がこの本を最初に出版した年齢は32歳と34歳であり今となっては信じられませんが、とにかく相当古い本であることは確かです。しかし、どんなに古くとも「ものの考え方」は今でも大いに参考になります。第12回の記事(分析を行う際の考え方(総論))の中でも紹介したのですが、大前研一氏は同書の中で次のように書いています。

 また本の帯には次のような宣伝文句があります。
『手本と解答がない今、成功へのプロセスは自らが考えださなくてはならない。(中略)著者の最善解を導きだす思考法を全公開』
 宣伝文句にある「最善解を導き出す思考法」は言い過ぎにしても、ものの考え方や思考態度は大いに参考になります。もし全文を読むのが面倒なら「参謀五戒」の項だけでもぜひお読みください。

企業参謀―戦略的思考とはなにか | 大前 研一 |本 | 通販 | Amazon
Amazonで大前 研一の企業参謀―戦略的思考とはなにか。アマゾンならポイント還元本が多数。大前 研一作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また企業参謀―戦略的思考とはなにかもアマゾン配送商品なら通常配送無料。
ハットさん
ハットさん

第85回目記事(チョークの点から何を想像するか? - 物事の正解は一つだけではない)も今回の記事と同じような内容です。関心がある人は読んでくださいね。

タイトルとURLをコピーしました