「2階級上の立場で考えろ」と言われて私が心がけていたこと #100

全般

今回は「『2階級上の立場で考えろ』と言われて私が心がけていたこと」という話しをします。

 どんな職業においても経験値が低い新人の頃は「もっと視座を高めるように」と頻繁に指導されます。そして、視座を高めるための具体的な方法の1つとして「2階級上の立場で物事を考えるように」とアドバイスされることも多いのですが、私はこのアドバイスに対してあることを心がけていました。今回はその心がけについて紹介させてください。

今回の記事で伝えたいことを先に要約すると…

 今回の記事で伝えたいことを要約すると次のとおりです。

 「2階級上の立場で物事を考えるように」というアドバイスをされたときに私が心がけていたことを要約すると以上です。今回お伝えしたいことの大筋はこれで終わりなので、お忙しい人はここで読むのを止めても大きな問題はありません。
 以下では、そもそも「2階級上の立場で考える」ようにアドバイスされるのはどうしてなのか?とか、そのアドバイスを実行するだけは十分ではないと私が考えるに至った背景などを紹介します。

まず紹介するのは「2階級上の立場で物事を考える」というアドバイスが割と一般的だということ

 今回の記事では「2階級上の立場で考えろ」と言われて私が心がけていたことを紹介しているのですが、まず紹介したいのは「2階級上の立場で物事を考える」というアドバイスは、コンサルタントが書いたビジネス関係本などで割と目にするということです。例えば、大前研一氏は次のように書いています。

 また、コンサルタントの山口周氏も次のように書いています。

 上記のようなアドバイスはコンサル業界に限ったことではありません。一般事業会社、例えば、トヨタの職場でも次のような指導が行われていると紹介されています。

 このように比較的よく言われているアドバイスだけに聞いたことがある人も多いでしょうし、内容も実に真っ当です。もちろん実行するとなると簡単なことではありませんから次のような補足をしている人もいます。

 いずれにしても、「2階級上の立場で考える」というアドバイスは、経験値や情報量の違いなどから実施上の難しさはあるにしても大変有益なものです。
 次項では、私がなぜこのアドバイスを単純に実行するだけでは満足しなかったのかという理由をお話しします。

視座の高い意見を持ちえたとしても実行が伴わないなら意味がないこと

 「2階級上の立場で考える」というアドバイスは、自分の視座を高めるための訓練としては確かに有益です。しかし、視座を高めて優れた意見を持ちえたとしても、口先ばかりで実行が伴わないなら、その組織においてはあまり意味がありません。どんなに高い視座からの意見を持ちえたとしても自ら実行しないとしたら「単なる評論家だ」との誹りを受けても仕方がないでしょう。しかし、もしそんなことを言われたら自分には我慢なりませんでした。私は、公認会計士として監査先の経営判断に当事者意識を持って関与すべきとの考えを持っていました。大前研一氏の次のような文章を読んで常に自分も同じ気持ちを抱いていました。

 視座を高めるための訓練として「2階級上の立場で考える」ことは有益だしその訓練は継続するにしても、「それだけではダメ。やはり実行が伴わなければいけない」のです。ただ問題は、どうすれば当事者意識が醸成され、決断力・実行力が鍛えられるかということです。そんなことを模索していたとき、常に危機管理の最前線にいた佐々淳行氏の次の文章に出会いました。少し長くなるのですが、ぜひ読んで欲しいので紹介させてください。異なる3冊の本から紹介します。

 上記佐々淳行氏のいう「決断の見取り稽古」だけでも大いに参考になるのですが、大前研一氏の次の指摘も実戦向けで気持ちが引き締まります。

 上記文章に出会ってからは、単純に「2階級上の立場で考える」ことだけで満足するのではなく、当事者意識をもって決断の見取り稽古をすることが大事との考えに至りました。そこで、次項では、私が具体的に心がけたことをお話しします。

私が具体的に心がけていたこと

 「2階級上の立場で考えろ」と言われて私が具体的に心がけたことは次の点です。
◆自分の担当外権限外であっても「自分ならどうするだろうか?」と当事者意識をもって真剣に考えること
◆上の立場で考えるにしても「2階級上の立場」ではなく、もう一段上の「3階級上の立場」で考えること

 このブログの読者の方の中には、視座を高めるために「2階級上の立場で考える」ことをすでに実践している人も多いでしょう。ただ、どうせ実践するなら私の心がけていたことも参考にしてもらえると、より一層効果が増すと考えます。

コーヒーブレイク

【中堅の人へお勧めすること:トップの孤独・悲哀も想像する】
 今回の記事本文で紹介した佐々淳行氏の文章にもあるとおり、「上司の決断ぶりを見習い、あるいは批判をして、自分の『決断』の練習をすること」は大切です。しかしそこで終わりにせず、ある程度の経験を重ねた中堅どころの人にさらにお勧めしたいのは、「自分が組織のトップだったらどうするか」を考えるということです。会社だったら社長、国レベルであれば総理大臣の立場になって考えてみる。そうすると、決断の練習になるばかりか、いままで思いもよらなかったトップの孤独・悲哀の一端も感じられるようになるかもしれません。ちなみに、トップの孤独感も想像しながら次のような文章を読むと、学ぶべき点がさらに広がります。

以上、一定の経験を重ねた中堅の人へのお勧めでした。

今回のまとめ

◆高い視座からの意見を持てるようにするには「2階級上の立場で考える」ことが有益だ。
◆しかし高い視座からの意見を持ったとしても、決断力・実行力が伴わなければ単なる評論家で終わってしまう。
◆決断力・実行力をつけるためには、先輩や上司が難問解決に苦慮しているとき、傍観者や責任ないヒラとして無関係を決め込むのではなく「自分ならこうする」と自分なりの解決策を考え決断してみること(これを「決断の見取り稽古」という)。
◆平時においても日ごろから「3階級上の立場」で考える癖をつけておくこと。

おすすめ図書

「ドットコム仕事術」(大前研一)

 大前研一氏の書いた仕事術の本としては、第56回目の記事(大前研一氏が電車の中でしていた頭の訓練法を真似る)「サラリーマン・サバイバル」を紹介しました。
 今回ご紹介する「ドットコム仕事術」も似たような内容の本です。出版時期は2007年ということで相当古い本ではあります。さすがに20年以上も前の本となると、今から見れば仕事術として納得感のない記述があるのは確かだし、また仕事術関連の本が毎年のように新たに出版されている現状を見ると、わざわざこんな古い本を入手して読む必要もないのではないかという疑問が沸いてきても当然です。しかしながら、本書の中の「序章」「会議力」「交渉力」だけでも目を通して欲しいと考えています。もちろんそれ以外の章でも参考になる記述が多数あり、今でも読む価値があります。そのため今回ご紹介した次第です。
 古い本だといってもブックオフのような古本屋ではかなり簡単に見つかりますし廉価です。機会があればぜひお読みください。

https://amzn.to/47BC1QB

「外資系コンサルの知的生産術」(山口周)

 著者の山口周氏はBCGなどの外資系でコンサルタントとして活動したのち、現在もコンサルタントや著述家としてご活躍の方です。その山口氏の著作として「外資系コンサルの知的生産術」をご紹介します。
 本書の副題は「プロだけが知る『99の心得』」となっており、1項目ごとに1つの心得が書かれていて、それが連番で99まであるという構成になっています。この99個の項目については順番どおりに読んだ方が効果的と考えられますが、ある程度仕事術関連の本を読んで仕事術に関する知識もあり、また自分なりに生産性を上げるための工夫を重ねてきた実践経験もある人にとっては、関心のある項目から読んでも構いません。1つ1つの項目は納得感のある内容ばかりです。私などはこの本を読むと、本ブログを書くよりも本書を宣伝するだけで事足りるのではないかと思ってしまうほど本書は良書です。もちろん初めて仕事術に触れる方は、一読しただけで本書の良さをフルに感じて頂くのは無理なのかもしれません。しかし、仕事の経験をある程度重ねた段階で読み直してもらえれば、本書の偉大なる価値に気がつくはずです。
 先ほど本書は99個の項目(心得)について書かれていると言いましたが、実は大きく「インプット」「プロセッシング」「アウトプット」に区分して書かれています。この区分と記載の順番も絶妙です。読者は、自分の知的生産を高めるために、「インプット」を見直せばいいのか、「プロセッシング」を見直せばいいのか、「アウトプット」を見直せばいいのか、という観点で意識させられます。また、最終章の「知的ストックを厚くする」では知的であるために普段からどういう姿勢で臨むべきかを広範囲にわたって説明してくれています。

 本書は知的生産性を高めたいと願っている人に広くお勧めいたします。

https://amzn.to/42OQ0A4
ハットさん
ハットさん

真剣に決断の見取り稽古を重ねて、来るべき時に備えておくことが大事です。

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