一流のプロを目指すうえで参考になる4つの属性(サーバントリーダーの10個の属性のうちの4つ) #90

リーダーシップ

今回は「一流のプロを目指すうえで参考になる4つの属性」という話しをします。

 仕事を始めて間もない頃は、誰でも慣れないことの連続でしょう。自分の仕事ぶりがとてもふがいなく感じられるものです。そんなときに仕事のできる先輩や上司を見ると、頼もしいやら、早く自分もあのレベルにまで到達したいやらで、とにかく憧れます。私もそうでした。そこで、何をどのようにしたらあんな風になれるのだろうかと考えながら、仕事ができる人たちをよくよく観察していたところ、共通項として一定の属性を有していることに気がつきました。それが次の4つです。
 1 気づき(Awareness)
 2 説得(Persuasion)
 3 概念化(Conceptualization)
 4 先見力・予見力(Foresight)

  今回は上記4つの属性が一流のプロを目指すうえで参考になるという話しをします。

4つの属性はサーバントリーダーの10個の属性の一部だった

 一流と言われる人が共通して持っている4つの属性の内容に入る前に、1つだけ補足させてください。
 先ほど「仕事ができる人たちは共通して4つの属性を有していることに気がついた」と申し上げたのですが、この説明は正確ではありません。実はたまたま「サーバントリーダーシップ」という本を読んだ際にサーバントリーダーが有する10個の属性について知り、この10個の属性のうち4つの属性は、サーバントリーダーであるかどうかにかかわらず、一流と言われる人に共通の属性だと気がついた、と言った方がより適切です。ご参考として、サーバントリーダーが有する10個の属性を紹介すると次のとおりです。

【出典】NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会のサイトより
「サーバントリーダーシップ」ロバート・K・グリーンリーフ (著)、 金井 壽宏(監修)、 ラリー・C・スピアーズ(編集)、 金井壽宏(監修)、 金井 真弓(翻訳)

 上記10の属性に関する考え方は、上司(部下を持つ人と言い換えてもいいのですが)にとってはとても大事なことです。リーダーを目指すうえでよくよく参考にすべき内容であり、10の属性のそれぞれについては「NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会」のサイトでぜひ確認して欲しいです。ついでに言うと、Googleが公式ウェブサイト「Google re:Work」で発信している「優れたマネジャーの要件を特定する」の「Google マネジャーの行動規範(10個)」も考え方がとても似ています。そちらも併せて読むことをお勧めします。
 ところで、今回の記事でフォーカスしたいのはこの点ではありません。今回の記事ではあくまでも4つの属性だけに限定して議論したいのです。なぜ4つに限定するのかというと、サーバントリーダーの10の属性に関して私は次のように理解しており、今回は一流を目指すうえで参考にすべき属性に焦点を絞りたいからです。
【サーバントリーダーの10の属性を次の3つに分類して理解】
 1 「寄り添ってくれる人」が持っている属性(3つ)
 2 「一流と称される人」が持っている属性(4つ) ➡ 今回の記事はここにフォーカス
 3 「導いてくれる人」が持っている属性(3つ)

 整理すると次のようになります。

 以下では、一流と称されるために身につけておきたい4つの属性について話しをさせてください。

4つの属性をどのように有機的に関連付けて理解すべきか

 まずは4つの属性をどのように有機的に関連付けて理解すべきかという点に関して共有させてください。私は次のようなイメージで認識しています。

 一流のプロと呼ばれる人は、細かい点までよく観察していて素人では気がつかないようなことを直ぐに指摘してくれます。また、何か特別新しいことを指摘してくれない場合でも、モヤモヤした状況をすっきりと整理して、こちらの頭の中をクリアにしてくれたりもします。また、先行きが分からない中でも少し先を照らしてくれます。そしてそれらを分かりやすく言語化してくれるのです。
 一流のプロを目指すならこの4つを意識しておきましょうというのが今回の記事で言いたかったことです。

4つの属性を考えるうえでヒントになるフレーズを紹介

 今回の記事でお伝えしたいことは以上です。ここまでで十分と感じた人やこれ以上時間がない人はここで読むのを止めても差し支えありません。
 ここから先は今一つイメージが沸かない人のために、4つの属性を考えるうえでのヒントになるフレーズを紹介します。

「気づき(Awareness)」に関するヒント

 まずは「気づき(Awareness)」に関するヒントとして、名探偵ホームズとワトソン君との有名な会話をご紹介します。

 呑気なワトソン君は普段使っている階段が何段あるのかなんて気にも留めていませんし、階段の段数だけでなく一事が万事こんな調子です。それに対してホームズはさすがです。注意深く心の眼で見ており、十七段あると知っています。「気づき(Awareness)」の大前提として単に見るのではなく注意深く観察することが大切だということを改めて教えてくれます。

「概念化(Conceptualization)」に関するヒント

 「概念化(Conceptualization)」という言葉で連想すると難しいようなイメージもありますが、もっと単純に「状況を整理すること」「関係性を理解すること」「全体感を理解すること」のように考えるとイメージしやすくなります。二つの文献からヒントとなるフレーズをご紹介します。
 まずは一つ目です。

 次は二つ目です。

 なお、上記二つ目については、第17回目の記事(分析のゴール(メカニズムを明らかにして構造化する)の中での紹介したフレーズと一部重複しています。ご関心があればそちらの記事もご参照ください。

「先見力・予見力(Foresight)」に関するヒント

 一流のプロならば「先見力・予見力(Foresight)」を持っておくべきだという考え方そのものには異論はありませんが、実際に「先見力・予見力(Foresight)」を一朝一夕で身につけるのは相当難しいです。そもそも天才でもない普通の人が努力して身につけられるのかという問題もあります。それでも、長年の経験と知見を生かして努力すれば凡人でもちょっと先の未来は予見可能になると信じています。そのような考えのもとで次の野村監督の言葉を読むとヒントをもらえるはずです。

 結局のところ「先見力・予見力(Foresight)」を持つためには「素人とは違うプロとしての視点」を強化するしかないし、そのためには観察力・洞察力を高めるとともにプロとしての経験値を積み重ねていくしないのです(天才は除く)。

「説得(Persuasion)」に関するヒントとして「言語化」について考える

 「説得(Persuasion)」というと色々な要素が複合的に関係してくるので身につけるうえでの難易度が一気に上がる感じがするのですが、単純に「気づき(Awareness)」と「概念化(Conceptualization)」と「先見力・予見力(Foresight)」の結果を言語化して伝えるくらいのイメージで考えると取っつきやすくなります。「言語化」と捉えると次のようなフレーズは考え方の入り口としてヒントになります。

 今回の記事は以上で終わりです。一流のプロを目指すうえで考えるべきことは色々ありますが、一つの在り方として今回紹介した4つの属性を身につけるように意識すること。こうすることによりやるべきことが明確化されます。ぜひお勧めいたします。

コーヒーブレイク

【サーバントリーダーシップの考え方】
 今回の記事ではサーバントリーダーシップについての詳細説明には立ち入りませんでした。あくまでも一流を目指すという観点からサーバントリーダーの10個の属性のうちの4つに限定し、さらにリーダーシップとかリーダーという観点での議論はしていません。ただし、サーバントリーダーシップそのものの考え方はとても役に立つので、いずれ機会があれば単独のテーマとして取り上げたいと考えています。
 ところで、サーバントリーダーシップについては、神戸大学名誉教授でリーダシップ論などがご専門の金井壽宏氏が著作の中でとても分かりやすい説明をしています。少し長くなりますが、ここで紹介させてください。

 リーダを目指すうえでも、サーバントリーダーシップの考え方を理解するうえでも、上記説明はかなり勉強になります。そのためここで紹介した次第です。
 なお蛇足ですが、上記で紹介した「リーダーシップの旅」という本については第21回目の記事(「本当の自分」探し(リーダーシップへの旅の第一歩))でも取り上げています。ご関心があればそちらもご覧ください。
 以上、サーバントリーダーシップの考え方に関してご参考まで。

今回のまとめ

◆一流のプロを目指すうえでサーバントリーダーの10個の属性のうちの4つが参考になる。
◆サーバントリーダーの10個の属性と、一流のプロを目指すうえで参考にして欲しい4つの属性の位置付けは下記のとおり

【4つの属性の相互の関係性】

おすすめ図書

「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」(中原淳、金井壽宏)

 本書は立教大学教授で経営学習論・組織行動論などがご専門の中原淳氏と神戸大学名誉教授の金井壽宏氏が対談形式で記した本です。内容的には、リフレクション(内省)をキーワードにしてマネジャーがどのように学習すべきかが語られています。今回の記事でテーマとした一流を目指すうえで意識すべきことに関連していうと、本書で語られている学習の考え方は、今回の記事とは切り口は違えど参考になる点がたくさんあります。それゆえ、マネジャーはもとより自分を成長させたいと願っている人全般にお勧めですが、今回おすすめ図書として紹介する理由はもう一つあります。本書では企業が従業員の学びをどのように支えるのかという観点で人事部門の在り方についても言及しているのですが、その中でも下記記述についてどうしても紹介したかったのです。

 上記内容は人事部門だけに言えることではありません。企業のどの部門にも共通した問題認識として受け止める必要があるし、もっといえば、どんな部署でも上司という立場にある人にとっては意識しておくべき内容です。さらにいえば、一流を目指す人ならば若いうちから身につけておくべき考え方だと理解しています。そういう意味において今回の記事でサーバントリーダーシップに関心を持たれた方を始め、学びとかキャリアについて考え続けている方に本書をお勧めいたします。

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ハットさん
ハットさん

4つの属性の中では「先見力・予見力(Foresight)」がもっとも難しいですけど、これが真の一流かどうかの分かれ目だと言い聞かせて精進し続けるしかないです。

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