チョークの点 - 物事の正解は一つだけではない #85

分析力・問題解決力

今回はクリエイティブな発想をしたいときに私が決まって思い出す本の一節を紹介します

 世の中にはとてもクリエイティブな発想をする人がいて、そういう人と一緒に仕事をするとたくさんの刺激をもらえます。同時に、どうしたら自分もあんな風にクリエイティブな発想ができるようになるのだろうかと考えてしまうのですが、そんなときに私が必ず思い出す本があります。今日はその本からの一節を紹介させてください。

固定概念にとらわれないために私が肝に銘じていること

 私自身がどれくらいクリエイティブな発想ができるかどうかはともかくとして、自由な発想するために私が気をつけていることがあります。それは固定概念にとらわれないことです。言い方を変えれば、物事の正解は一つだけではないことを常に意識することです。この点を意識するときに必ず思い返す本の一節があります。「チョークの点」という一節です。

 さて皆さんならどのように答えるでしょうか?少し考えてみてください。
 「頭にガツンと一撃」という本には次のように書いてありました。全文を紹介します。

 私がこの本を最初に読んだのは1992年で社会人5年目でしたが、本のタイトル「頭にガツンと一撃」のとおり衝撃を受けました。自分の思考がいかに硬直しているのか、柔軟な発想が欠如しているのかを痛感させられました。それ以来柔軟な発想を維持するために、上記「チョークの点」というエピソードを事あるごとに思い出すようにしています。
 ところで、実は「チョークの点」という一節の前にはこんなことも書かれています。

 社会人になり仕事に専念するようになると「(試験と違って仕事では)正解は一つではない」というようなフレーズを耳にする機会は確かに多いのですが、そうは言うものの、試験慣れしてしまった人ほど「正解は一つで、それを素早く求めるべき」という思考の性癖が骨の髄まで染み込んでいます。試験だけではなくテレビのクイズ番組などでもそうなのですが、基本的に模範解答がありその解答にいかに近い答えを出すかという思考態度を捨て去るのは容易ではありません。だからこそ、「チョークの点」の一節を肝に銘じておく必要があるのです。
 今回の記事で伝えたかったのは以上です。この記事を読んだからといってクリエイティブになるわけでもないし固定概念から解放されるわけでもありませんが、少なくとも意識しておくことによって思考態度は大きく変わってくると私は考えています。

参考:名著「失敗の本質」でも指摘されている学習における失敗要因

 今回の記事では「チョークの点」の一節を紹介しました。あとは各自が思うところを工夫して今後に活かして欲しいと願っています。そういう意味でこれ以上何かを書いてもあまり意味がないかもしれませんが、以下ではお時間がある人の参考として、名著「失敗の本質」( ➡ 第74回目から第82回目の記事(全9回)で紹介した本です)で指摘されている日本軍の学習における失敗要因も紹介しておきます。自分の思考が型にハマっていると感じる方がその原因の一端を考えるうえでヒントになるはずです。

 上記引用と合わせ読んで欲しいのが堺屋太一氏の「組織の盛衰」( ➡ 第74回目の記事の「おすすめ図書」で紹介した本です)に書かれている次の一節です。本書は初版が1993年なので30年以上も前に書かれたものですが、今読んでも考えさせられる内容です。

 堺屋太一氏は、「試験が上手で一流大学に入った人」、いわゆる「優秀な人材」の特徴として「答えがあると分かっていて、解き易そうな問題から手がける傾向が強い」と指摘しています。また堺屋氏は、このような人材が直ちに問題となるわけではないが、少なくともこのような人材だけを優遇したら「絶対に分野違いの新規事業や飛躍的な改革はできないだろう」とも指摘しています。確かに堺屋氏の指摘のとおりなのですが、逆に言えば、「答えがあるかどうかわからなくても、難しい問題から手がける傾向が強い」人ばかりでも組織としては困ります。あくまでもバランスが重要なのです。この点も踏まえたうえで今回紹介した「チョークの点」のエピソードを思い起こしながら「物事の正解は一つだけではない」ということを意識したいと私は常々考えています。

今回のまとめ

◆私たちの思考には「正解志向」が深く染みついている。
◆それを脱却するために「物事の正解は一つだけではない」ことをいつも意識しておくべき。
◆だから「チョークの点」のエピソードを思い起こせ。

お勧め図書

「頭にガツンと一撃」(ロジャー・フォン・イーク、城山 三郎翻訳)
「眠れる心を一蹴り」(ロジャー・フォン・イーク)
「創造力のスイッチを入れろ!」(ロジャー・フォン・イーク)

 今回の記事本文で紹介したロジャー・フォン・イーク氏の著作として、「頭にガツンと一撃」とそれ以外の2冊、合わせて3冊の本をご紹介します。いずれも出版されてから随分と時間が経過しており、特に①「頭にガツンと一撃」は1984年に刊行されたので初版から40年も経過しています。そのため今となっては古本で入手するしかありませんが、ブックオフなどでもたまに見かけますので、もし見かけたらぜひお読みいただきたい本です。
 3冊ともクリエイティブに思考するために頭のこわばりをほぐして柔軟になりましょうねということを意図した本ですが、やはり最初に出版された①「頭にガツンと一撃」が一番お勧めです。①と②はもともと企業向け研修テキストをベースにして書かれたこともあり、イラストありクイズ形式ありといった軽いタッチの本で、最後まで飽きずに楽しく読むことができます。
 それに対して③は若干毛色が異なる内容となっています。古代ギリシャの哲学者・ヘラクレイトスの言葉・格言(著者はこれを「エピグラム」と呼ぶ)をヒントに創造力を養成しようとするものです。例えば、ヘラクレイトスの「円の終点は始点ともなりうる」というエピグラムから、同じ状況でも見方を変えれば考え方も変わるし、アイディアも変わるといったことを連想していきます。要すれば、ヘラクレイトスのエピグラムから色々連想して創造的に考えてみようよという本です。内容的には堅苦しくないのですが、問題はヘラクレイトスのエピグラムの中には何を言っているのかよく分からないものがあることです。例えば、「われわれは目覚めているあいだひとつの世界を共有するが、眠っているあいだはそれぞれが自分だけの世界に帰っていく」というエピグラムがあるのですが、このエピグラムからどのように創造的になればいいのか私には分かりませんでした。そのため、人によっては途中で読む気が無くなってしまうかもしれません。ただ著者はこの本を創造力養成のためだけでなく、瞑想のための書または啓示の書としての利用方法もあると書いていますから、読んですぐに意味が分からなくても気にする必要はないのかもしれません。
 いずれにしても、上記3冊とも思考を揺さぶり固定概念を振り払うための良い刺激をもらえる本です。ぜひ機会があればお読みください。

Bitly
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ハットさん
ハットさん

正解は一つではない。実務ではこの点をいつも意識しておきたいです。

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