センテンス(文)を分かりやすくする4つのコツ #19

報告書作成(文章作成も含む)

今回のテーマは「センテンス(文)を分かりやすくする4つのコツ」です

 今回はセンテンス(文)を分かりやすくするためのちょっとしたコツをお話しします。

これからは「文章」を自分では書かないかもしれませんが…

 先日NHKの番組を見ていたらChatGPTの進化に関連して専門家の先生がこんな主旨のことを言っていました。

「将来的には、人間が自分で文章を書かない時代が来る。将来から振り返って今をみると、『あの当時はまだ自分で文章を書いていたんだ』と懐かしく思うかもしれない」と。

 そんな時代が迫っているときに、今回のテーマである「センテンス(文)」を分かりやすくするコツを知っておくことに何の意味があるのかとお感じになるかもしれません。確かに、「センテンス(文)」の固まりである「文章」を書く機会は消滅するかもしれません。しかしながら、言葉によるコミュニケーションが残るかぎり「センテンス(文)」を作る機会はなくならないと考えています。そのため、「センテンス(文)」を分かりやすくするコツを知っておくとまだまだ役に立つはずです。

お断り:今回はあくまでセンテンス(文)だけを対象にしています

 今回の記事では「文(センテンス)」とその固まりからなる「文章」を区別して使い分けています。その前提でご留意いただきたいのですが、今回はセンテンス(文)だけを対象に分かりやすくするためのコツを説明します。いわゆる「文章読本」で対象にしているような文章についてのテクニック、たとえば、テーマ選びとかパラグラフとか起承転結などの議論には立ち入りません。

参考:アニメ「ブルーピリオド」からヒントを得た作文の構成要素とは?

 なお本論に入る前に、今後の参考にご紹介したいことがあります。唐突に言い出して何のことだと思われるかもしれませんが、TVアニメに「ブルーピリオド」という芸大を目指す学生を描いた作品があります。この作品の中で「絵画の構成要素とは何か?」というやり取りがありました。この考え方はとても応用がききます。私は仕事のさまざまな分野で活用しています。たとえば、「作文の構成要素は何か?」というときには次の図のように考えています。

 今回の記事では、上記「作文の構成要素」の右下の「作文技術」に関して、ちょっとしたコツをお伝えするだけです。ただし、この全体像を頭に入れてくと、のちのち文章全体のレベルアップを図る際や、プレゼンテーションの技術向上を目指す際に役に立ちます。参考にしてください。

センテンス(文)を分かりやすくする4つのコツ

 それではここから今回の本論です。センテンス(文)を分かりやすくするコツとして最低限身に着けて欲しいのが次の4つです。
①一文を短くすること。
②文と文とをつなぐときにどんな論理関係でつながっているのかを意識すること。具体的には、文と文をつなぐ接続詞を工夫すること。
③修飾語は修飾される語の近くに置くこと(できれば主語も述語の近くに置くこと)。
④箇条書きを多用すること。

 センテンス(文)を分かりやすくするコツは、上記4つの他にも挙げればきりがありませんが、少なくてもこの4つを意識するだけでも格段に分かりやすくなります。以下では簡単な説明をしましょう。

①一文を短くすること②文と文をつなぐ接続詞を工夫すること

 実はセンテンス(文)の長さと分かりやすさとは必ずしも関係がありません。一文がどんなに長くても、上手な人が書くとすらすら読めます。ただ、文は長くなればなるほど書いている本人も何を書いているのかわからなくなり、支離滅裂な内容になる可能性が高くなることは確かです(要すれば、長くなるほど分かりにくくなる可能性が高いということです)。だから一文を短くしておく方が無難です。
 ここで1つ事例を紹介します。下記文はYahooニュースのコメント欄に投稿されていたものです。

(Yahooニュースに対して投稿されていたコメントより)
将棋の棋士はタイトルに絡まない多くの人と少しとる人がほとんどだが、一方で多くのタイトルを取る人と一時代を築く人に分かれると思う。

 それほど長い文ではないのですが、私はこの文をパッと見てすんなりは読み取れませんでした。私なりに修正してみると次のようになります。修正にあたっては一文を短くし、さらに接続詞を工夫してみました。両者を見比べてみてください。

(修正案)
将棋の棋士は、タイトルに絡まないか、絡んでも少しだけの人がほとんどだ。その一方で、ごく少数の人だけが多くのタイトルを取り一時代を築く。つまり棋士はその2種類に分かれると思う。

 なお、原文が分かりにくいのは、文の長さだけでなく言い回しの表現にも理由があります。思ったことを瞬間的に吐き出すような形で文として書きあげ投稿したのでは?と推測します。しかし、もし修正案のように、初めから一文を短く書いていれば、投稿者自身がもう少し冷静にわかりやすい文を書けたかもしれません。
 いずれにしても、一文を短くすると分かりやすさが高まりますから試してみてください。

③修飾語は修飾される語の近くに置くこと(できれば主語も述語の近くに置くこと)

 修飾語と修飾される語はできるだけ近くにしておかないと意味が読み取りにくくなるばかりか、修飾関係を誤って解釈し文意を誤解してしまう可能性すらあります。したがって、この点はどんな文章読本にも注意事項として指摘されているのですが、意外と徹底されていない印象があります。その理由は、気持ちが高ぶっているときに何も意識せずに文を書くと、気持ちを表す修飾語だけ先に書いてしまい、修飾される語は遠く離れた文の後ろの方で登場してしまうということはありがちだからです。
 例えば次のような感じです。

(原案)
なんとしても危険でお金と工数がかかる対策を認めるわけにはいかない。

 なんとしても認めたくないという気持ちがわっと先走ってしまい、「なんとしても」という修飾語をまずは書き、修飾される語(「認めるわけにはいかない」)を離れた位置に書いてしまうと、このような意味が読み取りにくい文になります。
 下記のように修飾語と修飾される語を近くに置くだけで、すんなりと読める文になります。

(修正案)
お金と工数もかかる危険な対策をなんとしても認めるわけにはいかない。

④箇条書きを多用する

 一文を短くするのと同類のコツとして箇条書きを多用するのもいいでしょう。書きたい内容が同列で複数ある場合には、短い文でつなぐよりは、箇条書きで項目を列挙した方が断然分かりやすくなります。すぐにでも活用できる簡単なテクニックなのでご活用ください。

今回のまとめ

センテンス(文)を分かりやすくするために簡単にできる4つのコツ
①一文を短くすること。
②文と文とをつなぐときにどんな論理関係でつながっているのかを意識すること。具体的には、文と文をつなぐ接続詞を工夫すること。
③修飾語は修飾される語の近くに置くこと(できれば主語も述語の近くに置くこと)。
④箇条書きを多用すること。

おすすめ図書

「日本語の作文技術」(本多勝一)

40年以上も前に出版された本ですが今でも売れている大ロングセラーです。古めかしさは否めないですし、最近では様々な文章読本が出版されているので何もこの本にこだわる必要もないかもしれません。ただ、文の分かりやすさを追求するために、修飾語の位置関係や句読点の打ち方などについてここまでこだわって説明してくれる本は珍しいです。
人によってはこれほどまでにしつこく事例で説明されることを鬱陶しいと感じるかもしれません。そういう人には無理にすすめませんが、それほど拒絶反応がないのであればぜひ一度は読んで欲しいです。
私はこの本を読んでから作文技術が飛躍的に向上しました。この本はあくまでも文を書くうえでの職人芸的なテクニックを教えてくれる本で、絵画に例えればデッサンを描く際の線の引き方とか影のつけ方のような技術を教えてくれます。そのため、この本を読んだからといって文章の全体的な構成をどうすればいいのかなどを学べるわけではありません。それでも、文を書く最初の一歩はこの本で学んで欲しいというのが私の気持ちです。

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「理科系の作文技術」(木下是雄)

あまりにも有名なロングセラーなので、このブログの読者でまだ読んだことのない人はいないかもしれません。しかし、たまたま今までご縁のなかった人はぜひ読んでください。特に社会人経験がまだ浅い人にはおすすめです。なにしろ文の書き方・文章の書き方はもとより、手紙の書き方や学会での講演の心構えまで教えてくれます。至れり尽くせりの素晴らしい本です。
おすすめする立場からやや心配な点があるとすれば、著者の木下氏が恐ろしいまでに理屈っぽい人なので、人によっては好みが分かれることがあるかもしれないことです。木下氏の理屈っぽいところは行間の端々に滲み出ていて、たとえば、事実と意見の区別に書かれた箇所でこんな記述があります。

『意見のすべてが根拠のあるものと根拠薄弱なものに分類できるわけではない。「彼女は美人だ」はどちらの分類にも属さない』

木下氏にはこの本と同じような「レポートの組み立て方」という本もあるのですが、こちらにもこんな記述があります。

『日本文学研究者のドナルド・キーン(米国コロンビア大学教授)が次のように言っている。「鮮明でない言葉はフランス語ではない」という言葉があるが、日本語の場合、「はっきりした表現は日本語ではない」といえるのではないか。‥‥数年前に日本人に手紙を出したが、その中に「五日間病気でした」と書いたので、友人は「日本語として正確すぎる」と言って「五日ほど」と直してくれた。(これに対する木下氏の注)この場合には私は、日本的言語習慣に染まった日本人としてではなく科学者として、「友人」氏に賛成する。病気の初めと終わりは画然としたものではないからである。』

こんなトーンの理屈っぽい記述が随所に出てきますが、これが気にならない人には最高の文章読本の一つです。ぜひおすすめします。

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「文章読本」(向井敏)

古い本ばかりになって恐縮なのですが、この本も30年以上前に出版されたもので現在は古本でしか入手できません。しかし、なぜこの本をすすめるかというと、著者の向井氏の文章がとても上手で勉強になるからです。向井氏の書く文は、一文の長さが必ずしも短くはない、むしろ長い方かもしれませんが、すらすら読めます。文章の達人が書くと、一文が短いか長いかということと分かりやすさとは何の関係がないことが分かります。そのことを実感するだけでも本書を読む価値はあります。本書では色々なタイプの作家の文章を取り上げて解説しており、たとえ著名な大作家が書いたものであれ、悪文だったら遠慮なくバッサリ切り捨てるところは読んでいて痛快そのものです。機会があればこのブログで内容の一部を紹介しようと思います。今回はこんな良書もありますというご紹介まで。

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ハットさん
ハットさん

文章術は今後も折に触れて紹介していきますね。

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