どんな場面でも通用する質問(問い)の構造 #7

質問力・コメント力

質疑応答時に見られる4つのタイプ

 私は企業で講演や大学で講義をする機会も多いのですが、一方的に話すのではなく必ず質疑応答の時間を設け双方向で議論するようにしています。そこで参加者の様子を観察していると、おおむね次の4つのタイプがあると感じています。

Aこちらから「遠慮なく質問をどうぞ」と促しても「何の質問もありません」と沈黙を貫くタイプ。
B質問の名を借りて自説を披露し悦に入っていると思われるタイプ。応答者としては「素晴らしいご指摘・ご質問です」と応じるが、周囲はそうは思っていないことも多そう。
Cご自身が疑問に思ったことを無邪気に質問するタイプ。目立ちたいとか自説を披露したいとかいう野心はまったくない。単純に自分の知りたいことを質問しているだけなのだが、周囲から見ると脈絡のない質問のように感じられ、わざわざ質問する意図が分かりかねたりする。
D問題のポイントを鋭く指摘し、本質や核心に迫る質問をするタイプ。新たな観点や気づきを与えてくれ、往々にして参加者を感心させる。

 今回の記事では、上記のうちDタイプの人の質問に関して、私が考えていることをお話しします。

鋭い人の質問(問い)を分析すると

 会議などで鋭い質問をしている人を見ると、誰しも『あの人すごいな』と思うと同時に、どうしたらあんな鋭い質問が瞬時にできるのだろうと羨ましくなります。そして、自分も少しでもそのレベルまで近づこうと本などで研究したりします。中には有益なアドバイスも書いてあったりするのですが、どんな場面でも通用する汎用的で再現性のあるノウハウはなかなか見当たりません。結局のところ才能の違いなのだとあきらめてしまうのがオチなのですが、ご安心ください。私がこれからお話しすることを知れば、どんなテーマであっても簡単に質問ができるようになります。

 私が長年にわたってよくよくDタイプの人の質問を観察してみると、おおむね次の4つに分類できました。

①実態を問う質問
➡当ブログでは「質問力」のカテゴリーで説明予定

②解釈(意味や構造)を問う質問
➡当ブログでは「分析の技術」のカテゴリーで説明予定

③原因や理由を問う質問
➡当ブログでは「論理的思考・議論術」のカテゴリーで説明予定

④対策に関連した事項を問う質問
➡当ブログでは「論理的思考・議論術」のカテゴリーで説明予定

 そして、どんなテーマに関してもこの分類に基づいて質問をしていけば、ポイントを外すことなく質問ができることが分かりました。私はそれ以来、「質問(問い)の構造」として次に紹介するような図としてまとめ、問いを考える際に参考にするようにしています。

質問(問い)の構造(全体見取り図)

 上記で説明したとおり、質問は大きく4つに分類されます。その構造を理解しやすいよう次のような見取り図にしました。

 4番目の質問(問い)である「対策」に関しては、図を別にして次のようにまとめることにしています。

 この2枚の図のイメージだけ頭に入れておけば、才能があろうとなかろうと、どんなテーマに対しても質問が作れるようになります。今回の記事では説明はこれで終わりなのですが、質問(問い)の構造の各論についてはこれからも説明していく予定です。

今回のまとめ

質問(問い)の構造の2枚の図を思い浮かべて質問を考えると、自分に馴染みのないテーマに対峙したときでも、質問が続々と浮かんできます。ぜひ活用してください。

おすすめ図書

①「ホンモノの思考力」(樋口裕一)
②「頭の整理がヘタな人、うまい人」(樋口裕一)

著者は長年にわたって小論文指導に携わり、小論文に関連する本も多数執筆しています。本書でも著者が長年の小論文指導で培ったノウハウが書かれています。それと今回の記事のテーマである質問(問い)とどんな関係があるのだろうと訝しがる方もいるかもしれませんが、大いに関係があります。もともと論文とは、問いを立案してその問いに対する考えを論じたものなので、論文を考えるということは、すなわち問いを考えるということとほとんど同じことなのです。質問(問い)を考えるということに関して本書は大いに参考になり、現に私が今日の記事で紹介した質問(問い)の構造図も本書からヒントを得ています。

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①「子どもに伝えたい<三つの力>」(齋藤孝)
②「質問力」(齋藤孝)

上記はともに約20年前に出版された本ですが、今読んでも内容に古めかしさを感じません。
①の本では、齋藤氏は「生きる力」として子どもに3つの力、すなわちコメント力(要約力・質問力を含む)・段取り力・まねる盗む力を伝えなければならないと提案し、3つの力それぞれについて詳しく説明しています。今回の記事のテーマである質問(問い)ということに関しても参考になるのはもちろんのこと、社会人として生き延びていくうえでも示唆に富む具体的なアドバイスがちりばめられています。大人だけではなく子どもたちにもお勧めしたい本です。
②の本も即席で使えるノウハウ満載で、私は若い頃に随分と読み返して参考にしました。今となっては懐かしい思い出です。

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ハットさん
ハットさん

質問力については、今回説明した質問(問い)の構造図をベースにして、今後は各論のお話をしていきます。基本はこの構造図を念頭においておけばOKです。

なお、次回も続きをお話しします(実態を問う質問(定義から始める)#8)。

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