悪い報告ほど早くしろ #88

コミュニケーション

今回は「悪い報告ほど早くしろ」という話しをします。

 どんな分野で仕事をするにしてもたった一人で起業でもしない限り、組織として仕事をすることになります。その組織では上司または部下という立場に分かれて仕事をすることになり、部下は上司に対して適時適切に報告をすることが大事です。今回はこの報告に関するアドバイスの一つとして「悪い報告ほど早くしろ」という話しをします。

今回の記事で伝えたいことを先に要約すると…

 今回の記事で伝えたいことを先に要約すると次のとおりです。

 今回の記事でお伝えしたいことの概略は以上です。「なんだ、そんなことならすでに普段から実行している」という方はこれ以上読む必要はありません。「分かってはいるけど、実際にはなかなかできないんだよね」と悩んでいる方には、今回の記事がヒントになれば幸いです。

悪い報告ほど早くすること

 まず報告に関する基本として、部下はどんな内容であれマメにそして早めに報告しておくに越したことはありません。この点についての異論はないでしょうが、実際にこの基本を徹底するのは困難です。なぜなら、たいていの場合、上司は上司の仕事で忙しくしており、その上司の手を止めてまで報告を聞いてもらうことはなかなか勇気がいることだからです。そのため、報告のチャンスを見計らっているうちにタイミングを逸してしまうなんてことはザラです。ましてや悪い報告ともなると、報告したらしたで上司から「なんでこんなことになってしまったのだ」と叱責されたり、「まったく忙しい時に面倒を起こしやがって」などのような嫌味を言われるかもしれないと思うとますます気が重くなり、結果として報告が後手後手になるのはよくあることです。
 しかしながら、上司の立場からすると、こと悪い報告に関しては、とにかく早く一報を入れて欲しいとの気持ちが強いはずです。もちろんどんなことでも程度問題ではあるので、いくら悪い報告といっても緊急性が著しく低くいとか、重要性が乏しいと判断できるようなものまで、いちいち速報を入れろと言っているわけではありません。しかし、部下からすれば取るに足りないように見えるものでも、上司が見ると決定的に重大なこともあります。通常上司の情報量や経験値は部下よりもはるかに多く視座も高いので、部下が気がつかないことでも上司が見れば重大性に気がつくこともあるのです。したがって、危機を多く経験している上司であればあるほど、報告すべきか迷っているくらいならさっさと一報を入れて欲しい、というのが本音です。悪い情報でも早く報告してくれればいくらでも対処のしようがあったのに、今頃になって報告されても手の打ちようがないという痛い目に何度もあっているからそう思うのです。
 ちなみに、あの有名なナポレオンは日頃次のような指示をしていたそうです。

 ということで、一刻を争う有事の状況はもとより、平時においても「悪い報告ほど早くする」というクセを徹底することをお勧めします。

緊急時の悪い報告は巧遅よりも拙速を旨とせよ

 「悪い報告ほど早くする」にしても、どのくらいの精度で報告するのかは平時と有事で使い分ける必要があります。有事の場合には一刻の猶予も許されないことが多いので、報告内容の完全性・正確性にこだわるあまり報告が遅れてしまうような事態は避けなければいけません。仮に報告内容が不完全・不正確であっても迅速性を重視すべきです。
 この点に関しては、危機管理のプロである佐々淳行氏の説明が実に含蓄に富んでいるのでここで紹介させてください。少し長い紹介になりますが、読んでおくと必ず役に立つ内容です。

 危機での報告は「巧遅よりも拙速」であるべきという指摘は、報告をする側も受ける側も忘れずにいたいものです。

いち早く報告するにしてもクッション言葉を置くなど一工夫が必要

 ところで、悪い報告を早くするにしても、その言い方とか伝え方にも配慮すべきです。誰でも悪い情報を言われるのは嬉しくないし、内容によってはかなり気分が沈みます。だからこそ次のような前置きをして、聞き手に心の準備をさせておくことが大事です。
<部下から上司に報告する場合の例>
◆申し訳ありませんが、今から耳に心地よくないことをご報告します。
◆先にお詫びしますが、申し訳ない事態になりました。
◆悪い事態が起きました。速報としてご報告させてください。

<上司から部下に伝える場合の例>
◆役目上これから嫌なことを伝えます。
◆これから厳しいことを伝えますが、どうか心を静めて聞いてください。
◆気分が暗くなるかもしれませんが、これから良くないことをお伝えします。

 具体的な表現は、その時の状況や相手によってうまく工夫して欲しいですが、いずれにしても単刀直入に悪いことのみを伝えるのではなく、ワンクッションおくという配慮は大事です。
 ちなみに、念のための報告をする場合にもクッション言葉として「ご承知かと思いますが、念のため再度お耳に入れておきます」のようなフレーズを言ってから報告すると、上司から「そんなことはすでに聞いている」などと嫌味な一言を言われる可能性は低くなります。

悪い報告を受けた上司は平静を保って聞くこと

 悪い報告はなければそれに越したことはないのですが、やむを得ない場合には報告するしかありません。もちろん部下も言いたくて言っているわけではありません。どの上司もそれは十分理解しているのですが、これから悪い事態に立ち向かうことになると想像すると、正直なところ憂鬱な気分にはなります。上司によっては露骨に不機嫌になったり癇癪を起す人もいるでしょう。でもそういうことを繰り返しているうちに部下は上司に忖度するようになり、やがて悪い報告をしなくなります。上司の耳に心地の良いことしか言わなくなるのです。そしてついには裸の王様となります。
 これに関する有名なエピソードを一つご紹介します。第二次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦での連合軍上陸の速報がヒトラーに届かなかったエピソードです。

 上記のような例は別に特別なことではありません。程度の差こそあれ、部下が上司に忖度して悪い報告をしないなんてことは日常茶飯事です。だから上司は、部下に悪い報告を迅速に気兼ねなくさせるために、日常から悪い報告を受けても決して不愉快な態度を表に出さないように努めなければなりません。むしろ悪い報告ほど「積極的にどんどんしてくれ」くらいのことを言い続けておくべきです。実際にはそれでも足りないくらいで、自分からちょっとした機会を見つけては部下に話しかけ「何か悪いことは起きていない?」と聞くような心がけでやらないと悪い情報はタイムリーに自分の耳に入ってきません。とにかく上司たるもの、悪い報告を受けた場合には平静を保って表情を変えないように訓練しておくことが大事です。
 この項の最後に、東北楽天ゴールデンイーグルス元社長の立花陽三氏がリーダーのあるべき態度としてとても有益なことを言っていますので、紹介しておきます。

 以上、今回の記事では「悪い報告こそ早くしろ」という話しをしました。

コーヒーブレイク

【上司はマメに報告して欲しいと考えている】
 本ブログでは学生さんや新社会人の方を対象にさまざまな仕事術を発信しています。おのずと部下の立場として仕事に従事する際の留意点が中心になります。もちろん部下として仕事をうまく行うためには上司が何を期待しているかも知っておかなければならないため、本ブログでは上司の考えていることもお話ししています。今回のテーマである「報告」に関しては、上司の本音を端的に説明している内容として、ぜひ紹介したい本の一節があります。少し長くなりますが2冊の本から紹介します。参考にしてください。

 とにかく上司への報告はマメにすること。これをするだけで上司のあなたに対する信頼度は格段に増すでしょう。

今回のまとめ

おすすめ図書

「めざせ!CEO ビジネストップになる「自己実現」のカギ 74」(ジェフリー・J・フォックス、金井壽宏監修、馬場先澄子訳)

 今回記事の中で本書からの引用をご紹介しましたが、これ以外にも参考になることがたくさん書かれておりお勧めする次第です。著者のジェフリー・J・フォックス氏は、マーケティング・コンサルティング会社の最大手、フォックス・ アンド・カンパニー社の設立者で、本書は、元CEOの父親が我が子に対して、自分の経験から導き出した仕事の秘訣をアドバイスするというコンセプトで書かれたものです。書名だけ見ると単に出世のノウハウを教えてくれるだけの本のようにも思えますが、そんなことはなく、仕事全般にわたるアドバイスに満ちています。
 書名サブタイトルにもあるとおり自己実現のカギとなる項目を74個挙げて、1つの項目について見開き2ページくらいのアドバイスが書かれている本です。本全体のボリュームとしてはかなり少なく、本の厚さとしても相当薄い部類に入ります。そのため、簡単に短時間で読める本ですが、あえてゆっくり噛み締めて読んで欲しい本です。
 なお監修者は、リーダーシップやキャリアの研究で有名な神戸大学名誉教授の金井壽宏氏であり、金井氏が書いた「監修者はじめに」を読むだけでも読書についての姿勢や生き方に関してヒントをもらえます。
 出版が2000年なのでかなり古い本ではありますが、もし古本でも見かけたらぜひ手に取って欲しい本です。

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ハットさん
ハットさん

上司が怖い感じの人だと話しかけるのも勇気が要りますが、とにかく早めの報告を心がけていれば事態は思っているよりもうまく着地するものです。

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