名著「失敗の本質」から学ぶ(戦略と作戦目的の明確化と関係者での共有の徹底)(全9回の2回目) #75

マネジメント

今回は「『失敗の本質』から学ぶ」の第2回目で「戦略と作戦目的に明確にした上で、その点の認識合わせを関係者間で徹底的にしておけ」という話しをします。

 前回(第74回)から「『失敗の本質』から学ぶ」というテーマで連載しており、私が「失敗の本質」を読んで肝に銘じていること(8つ)を順にご紹介しています。今回は1番目「戦略と作戦目的に明確にした上で、その点の認識合わせを関係者間で徹底的にしておけ」についてお話しします。

今回お伝えしたいことを最初に要約すると…

 今回お伝えしたいことを最初に要約すると、「何事をするにせよ、始める前に戦略と作戦目的に明確にした上で、その点の認識合わせを関係者間で徹底的にしておけ」ということです。図解すると次のとおりです。

 「なーんだ、それだけ?」という感想を持つかもしれませんが、これが徹底されずに失敗したのが日本軍なのです。「失敗の本質」には具体例がたくさん紹介されています。そのいくつかを紹介させてください。

「失敗の本質」ではどのような指摘がされているのか?

戦略と作戦目的の明確化

 「失敗の本質」のなかで再三にわたって強調されている日本軍の失敗要因は、戦略の欠如と作戦目的のあいまいさです。この点は「失敗の本質」で取り上げられている6つの作戦いずれにおいても共通しています。「失敗の本質」では次のように要約しています。

 日本軍の失敗要因としては「精神論を重んじる」とか「現地に丸投げする」なども挙げられますが、これらは突き詰めると戦略や作戦目的があいまいだったことと関係しています。なぜこの作戦をするのか(Why)、何を目標としているのか(What)、の2点を明確にしておけという教訓は何よりも重要でしょう。
 ちなみに、この点に関連してとても参考になる説明があります。湾岸戦争でロジスティックの総指揮をとった米軍陸軍中将・パゴニス氏の次の言葉です。

 目標(What)について、ゴール(Goal)と定量的な目標物(Objective)の2つに区分するという考え方はとても参考になります。
 いずれにしても何かのプロジェクトを行う際には、なぜそれをするのかという目的(Why)と、何を目標としているのか(What)、の2点について明確にしておくべきです。

関係者間で徹底的に認識を合わせておくことの重要性

 戦略と作戦目的の明確化、すなわち目的(Why)と目標(What)の2点を明確にしたら、次に留意すべきは、この認識を各関係者で徹底的に共有しておくことです。少しでも目線がズレていると失敗確率が高まります。
 この点に関して「失敗の本質」の中では、「ミッドウェー作戦」や「レイテ海戦」を例に挙げて次のように指摘しています。少し長い引用になりますが3つご紹介します。

 結局のところ、そもそも作戦目的が明確でなかったうえに、作戦の立案者と遂行者の間で十分な意思疎通が行われていなかったということです。これでは関係者の間で目線など一致するはずもありません。
 ちなみに、これに関連して元プロ野球監督だった野村克也氏は著書の中で次のように書いています。野村監督はさすがです。

 私の経験で言えば、事前に念には念を押して確認しても、相手はこちらの意図を完全に理解していないことも多いし、仮に理解はしていてくれても、実行段階で意図どおりにやり切ってくれないことも多いです。それでも、とにかく作戦目的の認識合わせを徹底する努力を惜しまないことが大切です。

今回のまとめ

◆何事をするにせよ、始める前に戦略と作戦目的に明確にした上で、その点の認識合わせを関係者間で徹底的にしておくこと

おすすめ図書

「山・動く: 湾岸戦争に学ぶ経営戦略」(W.G. パゴニス)

 著者は米陸軍中将で湾岸戦争の際にロジスティックの総指揮をとった人です。著者が軍人ということもあり軍隊での考え方を中心に説明をしているため、それだけで拒絶反応を抱き、読むのを躊躇する人もいるかもしれません。また、ロジスティックの重要性は認めるにしても、別にロジスティックの専門家になるわけでもないからそれほど関心がないという人もいるかもしれません。しかし、本書は組織の運営の仕方などでも大変参考になることが書かれており、ビジネスに従事している人でも教えられる点が多々あります。その一例を紹介すると次のような感じです。

 本書では、巻末の監修者(佐々淳行氏)あとがきを読むだけでも価値があります。古い本であり、また古本屋さんでも最近はあまり見かけないため、若干入手困難かもしれません。それでも縁あってもしお見かけしたらぜひ読みいただきたい本です。

Bitly
ハットさん
ハットさん

戦略と作戦目的を明確にして、関係者で共有しておくこと。大事ですよね。

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