大前研一氏が電車の中でしていた頭の訓練法を真似る #56

論理的思考・議論術

今回は大前研一氏が電車の中でやっていた頭の訓練法を紹介します

 多くの人にとって毎日の通勤時間は一日のうちの結構な時間を占めます。これが長年積み重なると社会人人生を通して無視できないほど大きな時間になります。2020年のコロナ禍で在宅勤務も広がり、通勤の機会そのものは以前よりも減ってきているかもしれません。それでもまだまだ通勤時間はバカになりません。そのため、誰しも通勤時間を有効に活用したいと思うのは当然でしょう。最近ではスマホの登場もあり、電車の中で出来ることの選択肢は以前よりも格段に多くなっていますが、それでも時間が細切れだったり、混雑した電車の中という環境の中で出来ることに制約があるのも事実です。
 そんな背景のもとで、私がお勧めしたいのは大前研一氏が電車の中で実践していた頭の訓練法です。アナログな方法ですが、手軽に頭を鍛えることができるので、私はもっぱら30代の頃この訓練方法でずいぶんお世話になりました。ぜひ若手ビジネスパーソンの方々の参考になれば嬉しいです。

大前研一氏が電車の中でしていた頭の訓練法とは?

 大前研一氏は、電車の中で次のような訓練をしていたそうです。

 私は30歳になりたての頃にこの文章を読んで触発され、大前氏に真似て通勤電車の中で次の訓練をするようになりました。

 訓練を始めた最初の頃はぎこちなくて、ちょっと考えている間に電車が次の駅に到着してしまうことがままありました。しかし毎日毎日繰り返しているうちに、どんなものを見てもパッと質問(問い)が思い浮かぶようになり、さらに論点に関する検討の道筋のようなものも短時間で思いつくようになりました。この練習法には次のような利点がありました。

①強制的に問いを生み出す練習になる
②短い制限時間の中で頭をフル回転させて考えるクセがつく
③題材は無数にある
④電車が次の駅に着くまでの時間は短いこともあれば長いこともあるが、とにかく制限時間があり、その間で思考が完結するクセがつくこと

 この訓練をしつこくやったおかげで思考の瞬発力も磨かれました。その能力のお陰で仕事で何度助けられたか分かりません。私は会計士として長年仕事をする中で、クライアントとのミーティングなどでその場で配布された資料や数値に対していきなり論点や課題を指摘してくれと依頼されることも多かったのですが、この訓練をするようになってからはそういう場面でも困ることはなくなりました。
 とにかく訓練を続けるということが大事です。大前研一氏も次のように書いています。

 練習方法については各自に合った方法で実践すればいいのですが、大事なことはとにかく継続することです。その点、通勤時間を利用した訓練ならば、なにしろ毎日のことなのでその積み重ねによる効果は絶大です。ぜひ試してみてください。

コーヒーブレイク

【問いが思考を規定する】
 今回の記事本文で紹介した電車の中での頭の訓練法と少し関係するのですが、もう一つ私が仕事で工夫していた考え方をご紹介します。
 私は会計士として仕事をしていたので会社の決算書(貸借対照表や損益計算書)から会社の問題点や課題を読み取らなければいけない場面も多いのですが、あるとき部下に「この貸借対照表には問題が1つあるけどそれは何だと思う?」と質問すると部下は必ず問題点を1つだけ、「問題が3つあるけどそれは何?」と質問すると問題点を3つ、「問題が5つあるけどそれは何?」と質問すると問題点を5つ挙げてくれることに気がつきました。実際に問題があるかどうかは関係なく、質問として「問題が●個ある」と問うと、人は問われた数だけ問題を探しにいくような思考をするということです。つまり「問いが思考を規定する」のです。
 それからは部下に質問するときだけでなく、自分に問いを出す場合でも、問いの出し方を工夫するようになりました。たとえば、今回の記事で紹介した電車の中で訓練をする場合でも、「3つ問題点を挙げよ」「5つの矛盾点を指摘せよ」「異なる観点から改善点を2つ挙げよ」のように問いの種類が多くなればなるほど考え方が広がりますし、どこから何を考えたらいいのか分からないという状態もなくなりました。取っ掛かりがなくてどこから考えていいのか分からないときには、まずは問いを無数に作る練習から始めることをお勧めします。
 ちなみに受験の論文試験などで「(意味不明な絵を見せられて)この絵を見て考えるところを論述せよ」のようなどこから手をつけて何を書けばいいのか分からないような問題をたまに見かけることがあります。このような論文試験でも、まずは問いを無数に挙げることから考え始めると、書くことが急に苦にならなくなります。
 記事本文の電車の中の訓練方法とともに参考になれば幸いです。

今回のまとめ

◆通勤時間を利用した電車の中での頭の訓練法は思考の瞬発力を高めるうえで大いに役立つ。
◆訓練のやり方は自分なりに工夫すればいい。
◆参考として私が実践していた方法は下記のとおり

おすすめ図書

「サラリーマン・サバイバル」(大前 研一)

 言わずと知れた大前研一氏の本ですが、出版は1999年で出版から24年も経過した本です。しかし、今読み返しても新鮮です。大前節炸裂で、ごもっともな主張が小気味よく書かれています。今回記事本文で紹介した内容だけでなく、どんな時代でもプロフェッショナルを目指す人にとって参考になるアドバイスが満載です。ここでは新社会人の参考になりそうな内容の一部を紹介しておきます。少し長くなりますが、とても有益なアドバイスなのでぜひお読みください。

 上記以外にも大前さんらしいハッとするようなことが書いてあります。チャンスがあればぜひどうぞ。

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ハットさん
ハットさん

電車の中の訓練、自分なりの方法を編み出して、ぜひ試してみてね。

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