カエサルが持っていたリーダーとしての5つの資質 #61

リーダーシップ

今回はカエサルが持っていたリーダーとしての5つの資質についてお話しします

 本ブログは、どんな仕事をしているかには関係なく自分を高めていきたいと願っている人に向けて少しでもお役に立てればと思い書いています。自分を高めるために有効な方法の一つは、自分が憧れるお手本になる人を見つけて、その人と自分を比較することにより自分に足りない点を認識し、漠然とではなく具体的なポイントに絞って精進することです。正しいやり方で精進してこそお手本となる人のレベルに少しでも近づけるのです。
 そういう意味で、偉大なリーダーと呼ばれる人がどんな資質を持っていたのかを知り、自分が今後努力すべき点の参考にすることは大事です。
 今回は、ローマ時代の偉大なリーダーとして有名なカエサルが有していたとされる5つの資質をご紹介します。

カエサルが持っていたリーダーとしての5つの資質

 カエサルが持っていたリーダーとしての5つの資質については、作家・塩野七生氏の有名な著作「ローマ人の物語」の中で次のように記されています。

 ここで注目して欲しいのは次の2つです。
 ①自己制御能力
 ②持続する意志

 まず1点目が「自己制御能力」です。自己制御能力とは、言い換えると自分で自分をコントロールする力であり、例えば、考え方・感情・態度・行動・使う言葉などを自分でコントロールすることです。実際に行うとなると相当な意志の強さがないとできないことできません。でもそれが求められるのが指導者だというのです。第2回目の記事(苦境を乗り越えるための4C(Commitment、Control、Challenge、Connectedness))で書いた Contorol にも通じるものがあります。

 2点目が「持続する意志」です。単に意志の強さのみを意図しているのであれば、「強い意志」などと表現すればいいのですが、それでは先ほどの「自己制御能力」とも若干重複することになります。ここでわざわざ「持続する意志」という言い方にしているのには理由があると考えます。「持続する意志」となると「高い志を持っており、それをずっと抱き続いている。そして必要とあらば周囲がどんなに反対しても断じて行う」のような意味が込められているように感じます。もちろん言葉の響きからそのように感じるだけかもしれませんが、とにかく私はこのように解釈しています。ちなみに名経営者と謳われた稲盛和夫氏もインタビューで次のように言っていました。

 なお、高い志を持つためには、まず「自分がどうありたいのか?」を明確に認識しておくことが大事です。この点に関連して、第21回目の記事(「本当の自分」探し(リーダーシップへの旅の第一歩))もご参照ください。

 カエサルが持っていたリーダーに求められる5つの資質をまとめると、「最低限『知性』と『肉体上の耐久力(体力)』の両方が必要となるよね、また周囲の人たちを説得しなければならないから『説得力』も必要。だけどそれだけでは不十分で、『自分で自分をコントローする力』を持ち、『高い志を保ち続けること』。そうしないと誰もついてこないから」ということです。この主張には納得感があります。

5つの資質に「決断力」が入っていない理由

 ところで、リーダーに求められる資質としてよく挙げられる項目に「決断力」があります。ところが上記5つの資質にはこの「決断力」が入っていません。この点については次のような解説があります。

 「決断力」はリーダーに求められる資質として当たり前すぎるということで含まれていないようですが、言い方を変えれば、あえて言わなくても必須の条件と言えそうです。

真のプロを目指す人には常に意識して欲しい

 今回紹介した「5つの資質」と「決断力」については、リーダーを目指しているかどうかにかかわらず、仕事ができる人に共通した要素だと考えています。どんな内容の仕事であれ、真のプロフェッショナルを目指している方には常に意識して欲しい要素です。
 同様の理由から、34回目の記事(リーダーに必要な4つのE(GE 元CEO ジャック・ウェルチの持論) )などもぜひ参考にしてください。

今回のまとめ

◆指導者に求められる資質は、次の5つ。
 ①知性
 ②説得力
 ③肉体上の耐久力
 ④自己制御の能力
 ⑤持続する意志
◆カエサルだけがこのすべてを持っていた。
◆なお「決断力」については、リーダーに求められる最低条件。だから上記5つには含まれていない。
◆リーダーになるかどうかはともかく、どんな分野でも真のプロを目指すなら常に意識して欲しい要素だ。

おすすめ図書

①「ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) 」(塩野七生)
「ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中) 」(塩野七生)
③「ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) 」(塩野七生)

④「ローマ人の物語〈11〉 ユリウス・カエサル ルビコン以後(上)」(塩野七生)
⑤「ローマ人の物語〈12〉 ユリウス・カエサル ルビコン以後(中)」(塩野七生)
⑥「ローマ人の物語〈13〉 ユリウス・カエサル ルビコン以後(下)」(塩野七生)

 「ローマ人の物語」は、作家・塩野七生氏がローマ帝国の誕生から滅亡までの約一千年間を描いた大作です。どれくらい大作かというと、単行本として毎年1巻ずつ出版され、15年間もかかって全15巻が完結したという作品です。塩野氏の文章はけっして上手ではないうえに文体もかなりクセがあるので、人によっては全15巻(文庫本版では全43巻)をすべて読み通すのにはそれなりの忍耐力が必要です。それでも、塩野氏の文明・政治等に対する鋭い論評や指摘には定評があり、単行本として毎年末に1巻ずつ出版されていた当時、財界人のトップクラスの人が正月休みに読むのを楽しみにしており、年始の挨拶では「正月に読んだ『ローマ人の物語』最新刊は勉強になったよ」のように語るのが一種のたしなみのような感がありました。
 それはともかくとして、今回の記事本文で紹介したカエサルの5つの資質に関連して、カエサルを具体的に知っておきたいという方には「ローマ人の物語」の中から上記①から⑥の本をお勧めします(上記①から⑥は文庫本版ですが単行本版もあります)。
 なおこれは蛇足ですが、著者の塩野氏はカエサルのことが大好きで大好きで仕方がありません。その想いは記述から十分に伝わってきます。その点を若干鬱陶しいと感じるか、可愛げがあると感じるかは評価が分かれるところかもしれませんが、いずれにしても、カエサルという題材そのものが面白いので比較的飽きずに読めます。

 カエサルの5つの特質をきっかけに、カエサル本人とその時代に興味をもった方にお勧めする本の紹介でした。

Bitly
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ハットさん
ハットさん

今回説明したカエサルの5つの資質は、第1回目の記事(自己を鍛えるための4つの観点(知・情・意・体))で説明した考え方と根本的には同じと考えています。例えて言えば、横綱に求められる「心技体」と同じ発想です。

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