今回は中村天風「運命を拓く」という本を紹介します。
今回は中村天風「運命を拓く」という本の紹介記事になります。
中村天風氏については「運命を拓く」だけでなくたくさんの著作が出版されており、大きな書店のビジネス書や自己啓発書コーナーに行くと、たいてい山積みになって販売されています。そのため、もし今まで中村天風氏の著作を読んだことがないとしても中村天風という名前くらいは知っているかもしれません。また最近では、メジャーリーガーとして大活躍している大谷翔平選手も学生時代に読んでいた本として取り上げられることも多いのですが、とにかくロングセラーなのでこのブログの読者の方々の中にもすでにいくつかの著作をお読みの人がいるかもしれません。
いずれにしても、今回は中村天風「運命を拓く」を紹介させてください。
「運命を拓く」をどんな人に読んで欲しいか?
「運命を拓く」がどんな本なのかは後ほどご紹介するとして、まずはこの本をどんな人に読んで欲しいのかをお話しさせてください。どんなに良書であっても、読むタイミングとか読み手の置かれている状況・バックグラウンドによって、その人の琴線に響くかどうかは変わります。
「運命を拓く」は、現在大きな困難に直面し深い悩みと向き合っている人にこそ読んで欲しい本です。元気な時や平穏な時に読んでも「ふーん」という程度の感想で終わってしまう可能性もありますが、何かに悩んで出口が見えないときに読むと突破口が見つかるかもしれません。
「運命を拓く」にはどんなことが書かれているか?
「運命を拓く」は文庫本版で332ページからなるそれなりに分量のある本ですが、著者が首尾一貫して言っていることは至ってシンプルです。突き詰めると次の3点です。
言われてみれば、ことさらすごいこと言っているわけではなく、どんな宗教や自己啓発書でも書かれているような常識的な内容です。それを本書では、あの手この手の言い方で繰り返し繰り返し説いています。もともと本書は中村天風氏が講述したものを氏の語り口・迫力などをできるだけ再現した形で出版したとのことなので、読んでいるうちに中村天風氏の勢いに引き込まれ感化されていくのは確かです。だからこそ読後感として「元気をもらった」「生きる力がわいてくる」「前向きな気持ちになった」などというような気持ちになる人が多いのでしょう。
ただ、次の2点で問題もあります。
①読後に一時的に感化されたとしても、日常的に継続して実践できるかどうか?
②死に直面する病や大惨事で家族・財産を失うなどあまりにも悲惨な状況下にある人が読んだ時に中村氏の主張を素直に受け止められるかどうか?
特に上記②については、苦しい状況下で「病になっても感謝しなさい」「どんなときも消極的に考えるな」とか言われても、頭では理解しつつ気持ちとしてそう簡単には受け入れられません。その点については、各自で修練し乗り越えていくしかないわけですが、いずれにしてもダメ元で本書を読んでみる価値はあると考えています。
「運命を拓く」から具体的なフレーズのご紹介
先ほど「運命を拓く」で書かれていることは突き詰めるとシンプルだと紹介したのですが、これだけの説明で終わると、本書の持つ雰囲気が全く伝わりません。そこで、今回は私が気に入って繰り返し読むフレーズのうち、ほんの一部だけをご紹介します。なんとなく雰囲気を感じてもらえれば嬉しいです。
◆たとえ身に病があっても心まで病ますまい
(出典)「運命を拓く」中村天風
◆人間の心で行う思考は、人生の一切を創る。
◆どんな場合があっても、消極的な方面から、物事を思ったり考えたりしてはいけないのである。
◆人間の健康も、運命も、心ひとつの置きどころ
◆いかなる場合にも心の態度を積極的に保つこと
◆生きているという荘厳な事実を、なぜ本当に幸せだと思わないのだ。苦しいとか、情けないとか思えるのも、生きていればこそではないか。
◆常に言葉に慎重な注意を払い、いかなるときにも、積極的以外の言葉を使わぬように心がけることである。
◆常に積極的言葉を使う習慣を作りなさい。
◆どんな場合があっても、消極的な言語表現をしないよう気をつけよう!
◆病になったならば、病をむしろ忘れるくらいな気持ちになりなさい。病は忘れることによって治る。病になろうと、不運になろうと心の態度は崩さぬことだ。どうせ人間生まれた以上死ぬときが来れば死ぬのだ。
◆心の中に感謝と歓喜の感情を、もたせるよう心がけることである。
習慣として、何でもいいから、感謝と喜びで人生を考える習慣づけよう。
◆感謝に値するものがないのではない。感謝に値するものに気がつかないでいるのだ。
極論すれば、病になっても、不運になっても、感謝しなさいということだ。
◆せめて生きている間だけは、どんなことがあっても、ニコニコ笑って行こうではないか。
つらいこととか、悲しいこととか、苦しいこととかいうのは、自分の心で決める評価なんだから。つらいことがあっても、「ああ嬉しい!こうして生きていられる!」と思ったらニコニコ暮らしていけるじゃないか。殺されるよりいいじゃないか。
◆「痛いといって、病が治るかい。つらいといって、つらさがなくなるかい」
「ああ今日は熱があるといって熱が下がったかい」
「自分の気持ちを、自分自身でもっとにこやかにしたらどうだい」
◆晴天の日もあれば、雨の日もあれば、風の日もある。そのたびに、自分の心を苦しめていたらどうなるのか。病のときに、病にこだわれば、病に負けてしまう。
運命のよくないときに、運命にこだわれば、運命に負けてしまうではないか。
だから、病でも運命でも、消極的な気持ちにしないこと。そうするには、相手にしないようにすることが一番である。
◆よしんば不快な感覚があっても、頭が痛いとか、腹が痛いとか、気が重いとか、脈が早いとか、あるいは熱があるとかというような場合があっても、それはそれとして、それに取り合わないような心を、持っていなければいけない。
◆環境を呪い、運命を悲しむことは止めなさい。
生きていることを、ただありがたく感謝しなさい!
◆よく考えてみよう。人生には特に病が生じたり、運命が悪くなったときは、ひとしおをその生命の力をより強くする必要があるときなのである。何でもないときは、さもあらばあれ、病や運命が悪くなったときには、そのときこそ、生命を守る戦いを開始しなければならないのだ。そのときに、戦いに勝つものは、力なのだ。しかも、その力を強くするには何を措いても、第一に心を積極的にしなければいけないのだ。それを、悲観したり心配したりして、心を消極的にして、なおかつ、より価値高く活きようとする考え方は、火種なしに炭から火を熾そうとするのと同じである。
◆心を健全に活かすには、いかなる場合にも、心に積極的な態度をしっかりと持たねばならない。(中略)たとえ、現在の体力が不完全であろうとも、病があろうとも、心配することも、悲観することもない。自分の心さえ、積極的に健全に際すれば、その肉体は自然に強健なものに作りかえられる(中略)だから、すべからく何事に対しても、またいかなるときといえども、勇気、勇気で対応しなければならない。
◆すでに、成就してしまったときの気持ちや、姿を、心に描くのだ。
◆折あるごとに、自分の希望するところ、求むるところのものを、「実現する!実現する!」と繰り返し自己自身にいう。(中略)ありていにいうと、最初に、信念強く、その希望が「実現する!」と断定したときには、その事柄は、(中略)もはや実在となっている(以下略)。
以上、中村天風氏の「運命を拓く」をご紹介しました。もしご興味がわいたようであれば本屋で手に取って見るだけでも見てください。
今回のまとめ
◆人生では常に心を積極的な状態にしておくことが大事。
◆マイナス感情をくれぐれも自分の中に取り込まないように注意しなければならない。
◆願望はあたかもそれが実現したかのようにありあり思い浮かべること。そうすると本当に実現する。
そんなことを言い聞かせてくれるのが中村天風氏の「運命を拓く」です。
何がしかの悩みに向き合っている方にお勧めします。
おすすめ図書
中村天風氏の著作は数多くありますが、基本は今回の記事本文で紹介した「運命を拓く」です。私としてはこの本1冊だけを繰り返し読むのが良いと考えています。ただし、「運命を拓く」を読むうえで若干懸念するのが、言い回しの古びた感じです。気にならない人にはまったく気にならないのですが、人によっては読みにくさや取っつきづらさを感じる可能性があります。特に若い人や読書習慣があまりない人にとっては馴染みにくいかもしれません。そういう人の入門書としてお勧めしたいのが上記①「ほんとうの心の力」と②「折れない心」です。
①の方は中村天風氏の色々な著作から代表的な項目を集め、各項目が見開き2ページで書かれています。好きな項目から読み始めることができますし、どの項目も2ページしかないのでさっと読めます。
また、②の方は、見た目で親しみが持てるように工夫してあり、読むうえでのハードルがとても低くなっています。もちろんそのために読み慣れた読者からするとやや軽薄な印象を抱く可能性もありますが、最初の1冊と考えれば問題ないでしょう。
「運命を拓く」を読んだところ馴染めなかった人は、それで中村天風氏の著作を毛嫌いするのではなく、まずは①か②でもう一度試していることをお勧めします。
①「力の結晶 中村天風真理瞑想録」中村天風
②「幸福なる人生 中村天風「心身統一法」講演録」中村天風
③「心を磨く 中村天風講演録」中村天風
「運命を拓く」を読んだ結果、中村氏の教えに関心を抱きもっと触れてみたいと思った方には、上記3冊をお勧めします。どれもテイスト的には「運命を拓く」と同じです。内容的にも若干重複感はありますが、大事なことを繰り返し繰り返し分かりやすい表現で強調してもらえると思えば、逆にありがたいことです。
なお、個人的な好みで言えば、私は①の「力の結晶」が好きです。ただし、これは好みの問題であり、内容的にどれが一番とかいうことはありません。書店などで現物を見比べたうえで惹かれる箇所があるようならばお読みください。
私は「運命を拓く」を単行本・文庫本・Kindle版の3つとも持っています。挫けて弱気になっているときに読むと元気になりますよ。