自己を鍛えるためにどのような観点で精進すればいいのか?(=仕事術を身に着ける目的)
このブログでは私が今まで身に着けてきた様々な仕事術を発信予定ですが、具体的な内容に入る前にまず最初に明確にしておきたいことがあります。それは、どのような目的のために仕事術を身に着けるのかということです。仕事ができるようになって成果を出したいとか、仕事で評価されてより高い給料をもらいたいとか、現在直面している困難な状況を乗り越えたいなど、人それぞれ置かれている状況によって異なり、目的は1つではないでしょう。
ここで、私からはアドバイスが1つあります。それは、仕事術を身に着ける目的は、長期的には、自己を鍛え人間性を高めることにあると自覚して欲しいのです。そして自己を鍛えるためには、単に論理的思考能力を高めるとか、文章作成能力やプレゼン能力を高めるといった個々の技(スキル)を磨くのではなく、総合的に人間力を高めていく必要があると認識して欲しいのです。
「知・情・意・体」の4つの観点でバランスよく鍛えることが大事
それでは自己を鍛え総合的に人間力を高めていくために、どのような観点で精進していくべきでしょうか。私は、下記4つの観点でバランスよく鍛えていくことが大事だと考えています。
あまり耳慣れないかもしれませんが「知・情・意」という概念があります。人間の精神を構成する3つの要素のことで、「知性」「感情」「意志」を指します。「知・情・意」の重要性については古来多くの人が指摘しています。例えば、渋沢栄一は著書「論語と算盤」の中で次のように書いています。
およそ人として世に処するに際し、常識はいずれの地位にも必要で、また、いずれの場合にも欠けてはならぬことである。しからば、常識とは如何なるものであろうか。(途中省略)「智、情、意」の三者が各々権衡を保ち、平等に発達したものが完全な常識だろうと考える。(途中省略)何人といえども、この三者の調和が不必要と認めるものは無かろうと思う。
(出典)「論語と算盤」(渋沢栄一)の「常識とは如何なるものか」より
(注)「論語と算盤」(渋沢栄一)の中では「知・情・意」の“知”が“智”となっています。
渋沢栄一の言わんとしていることは、要すれば、世の中でうまくやっていくためには、「知・情・意」のバランスが大事だということです。そしてこの「知・情・意」に「体」を加えて「知・情・意・体」という4つの観点で捉えるべきだと提案しているのが明治大学教授の齋藤孝氏です。齋藤氏は自身の著作の中で次のように書いています。
「技」というものは使い方しだいで危険なものになります。だから武道でも「心技体」といって「心」を大事にしてきたのです。心の三つの働きである「知情意(知性と感情と意志)」がバランスよく発達することで、判断が確かになります。
(出典)「考え方の教室」(齋藤孝)より
私はこれに「体」を加えて、「知情意体」を基本と考えています。知性だけではなく感情面の豊かさや、こうしたいという意志、そしてそれを支える身体があってこそ、技は発揮されるものなのです。〈考える力〉というのは、これらが組み合わさった総合力として捉えていかなければなりません。
私も齋藤氏の考え方に全面的に賛成です。自己を鍛えていくには「知・情・意・体」の4つの側面からバランスよく総合的に精進することが重要です。「知・情・意・体」の中でどの側面が弱点かを自覚して積極的にそこを改善していくとともに、自分の強みがどこにあるかも理解してその能力をより高めていくことが大切なのです。
「知・情・意・体」のそれぞれの観点でどんな技(スキル)などを磨けばいいのか?
それでは「知・情・意・体」のそれぞれの観点で今後どのような技(スキル)などを磨いていけばいいのでしょうか。それは例えば、次のような技(スキル)や能力だと考えます。
区分 | 鍛えるべき技(スキル)や能力の例示 |
知 | 論理的思考力、観察力、分析力、判断力、決断力 |
情 | コミュニケーション能力、質問力、説得術、共感力 |
意 | 自己制御力(セルフコントロール)、やりきる力、危機管理、レジリエンス力 |
体 | 肉体上の耐久力、呼吸法、 |
なお、ユニ・チャーム社長の高原豪久氏は、理想とする人材が兼ね備えておくべき要件を「智・情・意」に関連付けて次のように述べており参考になります。
智・情・意の高度なバランス
(出典)「智・情・意の高度なバランス」高原豪久 ユニ・チャーム社長(2019年1月10日 日経新聞WEB刊)
(途中省略)
「智・情・意」の中身は、その国の文化や時代背景や生活環境などによって個人差があるため、単一なものではありません。重要なのは、我々一人ひとりが「智・情・意」の各要素をより高める努力と、どれかが突出するのではなく、3つが常にバランスを保ちながら成長することを目指すことです。
(途中省略)
リーダーに必要な「智・情・意」は先述しました「共振人材の6要件」と重なっていると思います。
具体的には…、
【智=(1)創造力・大局観(3)直感力・現場感(4)実践力・論理性】
【情=(2)コミュニケーション力・傾聴力・提案力】
【意=(5)胆力・求心力・共感性(6)徹底力・しつこさ・真面目さ】
です。
(以下省略)
いずれにしても、当ブログでは「知・情・意・体」の観点から求められる様々な技を総括して「仕事術」として扱い、色々と発信予定です。
今回のまとめ
仕事術を身に着ける目的は究極的には人間力を高めることにあり、「知・情・意・体」の4つの観点でバランスよく総合的に鍛えることが重要です。
「知・情・意・体」の代わりに「心・技・体・知」という言い方で覚えてもいいよ。