問題直面時の対応の仕方でその人のレベルが分かります
上司として部下の仕事のレベルを評価するとき、とても分かりやすい判断材料の1つになるものがあります。それは部下が問題に直面したときの対応の仕方です。私は次の5つのタイプに分けて部下のレベルを見極めていました。
このブログの読者として想定しているのは学生さんや社会人になりたての方ですが、そのような皆様にとって自分はどのタイプでしょうか。ぜひ各自で振り返って頂き、今後皆様がレベルアップしていくための参考になれば嬉しいです。
以下ではタイプごとに簡単な説明をします。
タイプ1(問題があることにすら気がつかないタイプ)
このタイプの人は、誰かに指摘されるまで問題に気がつくことはありません。ところで、なぜ問題に気がつかないのでしょうか。この点を考える前に、そもそも問題とは何かということから復習させてください。
第27回目の記事(問題解決に向けた議論の前にまず行うべきこと(関係者の目線(認識)合わせ))において、「問題」とは、次の図のように「あるべき姿(TO BE)」と「現状・実態(AS IS)」との「ギャップ」と定義しました。
問題の存在に気がつかない人というのは、本来の「あるべき姿」のイメージを持っていないのか、それとも「現状・実態」をよくわかっていないのか、あるいはその両方です。しかし多くの場合には、知識・経験等が不足しているために、何が「あるべき姿」なのかをよく理解しておらず、漠然と「別に現状でも何の問題もないでしょ」という思考回路を経ていると推測されます。要すれば、あるべき姿・処理の根拠となる法令などの知識や考え方が足りないのです。したがって、まずは基本的レベルの知識や経験を身につけるように学び続けるしかありません。
タイプ2(問題があるかもしれないと心配になり上司に相談するタイプ)
このタイプの人は、上司に対して「こんなことがありました。何か問題はありますか?」というような相談報告を愚直にしてくれます。それがいいことなのかどうかは、もちろん問題のレベルにもよるので一概には何とも言えません。あまりにも低レベルの論点でそれをされると、上司によっては「問題かどうかをまず検討するのがあなたの役目でしょ?」とか、「問題と解決策をセットで持ってきて欲しい」との感を抱き、内心ムッとする人もいるかもしれません。一方で、多くの人が見過ごしてしまうような兆候段階でいち早く何かを察知してタイムリーに相談してくれるなら、上司として本当にありがたいと感じます。
このタイプの人は以下の点に気を付けた方がいいでしょう。
①何かの兆候段階で懸念を感じて上司に相談するなら、とにかく早いタイミングで行うこと。
②自分の能力に見合ったレベルの論点だったら(つまり、わざわざ上司を煩わすようなレベルの問題でないのなら)、問題の特定と解決策の検討までを自分で行ってから上司に相談すること。
③何でもかんでもメリハリなく相談していると、上司によってはあなたの相談を聞き流すようになりオオカミ少年のように扱われてしまいます。優先順位に関する感度を大切にすること。
タイプ3(問題を的確に上司に報告するタイプ)
このタイプの人は、何か問題が生じているときに問題の論点を的確に把握して上司に相談報告してくれます。部下としては標準的レベルの対応ですが、問題を的確に報告してくれれば上司にとっては大変ありがたいですから、通常の上司であれば少なくとも不満は感じないでしょう。
ただ、逆に部下の観点から言えば、多くの部下がそのレベルにあるとするならば、問題を的確に報告しただけでは自分を差別化することができません。上司から「この部下は標準よりも出来るね」と評価されたいのであれば、問題に対する解決策も検討したうえで上司に相談報告することを心がけるべきです。
タイプ4(問題と解決策をセットで上司に報告するタイプ)
このタイプの人は、問題と解決策をセットで相談報告してくれます。もちろん部下が考えてくる解決策については検討不足で却下することも多々あるのですが、問題だけしか報告してこない部下が圧倒的に多い中で、自分なりに当事者意識を持って解決策まで考えるという姿勢にその部下の将来性を感じる上司は多いはずです。部下としてこのレベルの対応ができれば立派です。
この項の最後に「パーキンソンの法則」で有名なパーキンソン氏が書いた著作から紹介したい文章があります。ご参考としてどうぞお読みください。
問題ではなく解答を持って来させよ
(出典)「パーキンソンのビジネス金言集129」(C・パーキンソン、M・ルストムジ)
問題を持ってくるのではなく、よく考えたうえでの解答や提案を持ってくるように部下を教育すべきである。
そうすれば、自分の時間が節約できるだけではなく、部下の育成にも役立つ。
タイプ5(問題に対して解決策として複数の選択肢を検討し、ベストの解決案を進言してくれるタイプ)
このタイプの人の凄いところは、解決策を導くうえで考え得るすべての選択肢を検討し、前提条件の違いによって解決策が変わってくることまで検討していることです。このような部下がいると上司としては本当に助かります。全幅の信頼をおき、多くの案件につき権限委譲することができます。
以上、問題直面時の対応で分かれる部下の5つのタイプでした。なお、公認会計士のようにクライアントから相談を受ける機会が多い仕事をしていると、クライアントの担当者のレベルもこの5つのタイプで見極めができます。ご参考になれば幸いです。
今回のまとめ
問題に直面したときの対応の仕方によって上司の評価は次の5つのタイプに分かれる。
おすすめ図書
「パーキンソンのビジネス金言集 129」(C・パーキンソン、M・ルストムジ)
記事本文の中では今回の記事テーマと直接的に関係した文章を1つだけ紹介しましたが、それ以外にもビジネスで役に立つことがたくさん書かれている本です。そのため、今回のテーマとはあまり関係はないのですが、この機会に紹介する次第です。著者のパーキンソン氏は「パーキンソンの法則」で有名なあのパーキンソン氏です。
書かれている金言(129個)は、リーダーシップ、人間関係、タイムマネジメント、組織運営、コスト管理など11の観点から分類されており、ビジネス全般にわたって大変参考になります。また、いずれも短い文章で簡潔に書かれており、どの金言から読み始めてもいいようになっています。そのためパラパラとページをめくりながら短時間で読むことができます。しかし、その割には記憶に残る大事なフレーズ満載です。ここでは私がいつまでも大切に記憶しているいくつかの見出しフレーズをご紹介しましょう。
◆忙しすぎる状況をつくるな
◆馬鹿みたいに忙しくするな
◆もっと簡単なやり方を見つけ出せ
◆手続きの奴隷となるな
◆すべての要素を考えたうえで決めよ
◆土壇場で意思決定はするな
◆「何もしない」意思決定もある
◆管理部門の権力化を防げ
◆上司を日常の監督業務から解放しろ
◆まずマイナス要因を取り除け
◆「隠れたコスト」を洗い出せ
◆資金コストの高さを知れ
◆経営は教育と知れ
◆成り行きに任せるな
上記のうち特に「成り行きに任せるな」という言葉は、私の危機を何度も救ってくれた言葉です。古い本なので古本でしか入手できないかもしれませんが、図書館などでは意外にも今でも結構目にします。もし機会があればぜひお読みください。
ちなみに、上司としては部下と話すちょっとしたときにも「今日は何か変わったことがありましたか?」とさりげなく聞くこと。そうすると問題意識が乏しい人でも「そうそう、こんなことがありました」と言って報告してくれ、それが早期の問題把握につながることが多いです。