プロなら口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにしてはいけない #101

全般

今回は「プロなら口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにしてはいけない」という話しをします。

 第100回目の記事(「2階級上の立場で考えろ」と言われて私が心がけていたこと)では「意見だけ言っても自分でやらないなら意味がない」というようなことを書き、併せて大前研一氏の「有言不実行の“社内評論家”も役には立たない。“有言実行”が大切」という言葉も紹介しました。
 今回の記事も同じような内容なのですが、第100回目の記事と異なるのは、「そもそも誰もが反対しないような一般論を主張するだけで終わらせるな」ということです。もっと踏み込んで言うならば「誰も反対しないような一般論を言ったところで何も言っていないのと同じだ」と言いたいのです。今回はそんなお話しをします。

今回の記事で伝えたいことを先に要約すると…

 今回の記事でお伝えたいことはシンプルで要約すると次のようになります。

◆プロなら口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにしてはいけないと肝に銘じること

 このブログは仕事経験が比較的浅い方を読者として想定していますが、もし読者の中に何かの専門家・プロと言われる立場の方がいればアドバイスです。誰もが反対しないような正論だけを主張しても基本的に何かの付加価値を生み出さないし、また、そのような主張をしたところでリスペクトもされないということです。さらに言えば、リスペクトをされないどころか「あの人はただの評論家だよね」と陰口をたたかれ、軽んじられることすらあります。
 したがって、特にプロならば「口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにするのはやめましょうね」と申し上げたいのです。
 今回の記事の内容はこれだけなので忙しい方はここで読むのを止めても問題ありません。
 以下では、誰もが反対しない一般論を主張してもあまり意味がないことを痛感させられる文章として、香西秀信氏「反論の技術」という本の一節をご紹介させてください。

誰もが反対しない一般論を主張することが意味ないと痛感させられる文章の紹介

 「誰もが反対しないような一般論を主張しても意味がないこと」を考えるうえでどうしても紹介したい本の文章があります。香西秀信氏「反論の技術」という本の以下の文章です。 
 すごく長い引用になるので大変恐縮なのですが、非常に皮肉たっぷりの辛辣な内容であり、自分の意見を振り返るのにはとても良い教材と言えます。ぜひここで紹介させてください。

 私が香西秀信氏の上記文章を読んだのは仕事を始めて7年目の時でした。今までの自分の意見がいかに弛んだものだったかを痛感させられました。それ以来、「誰もが反対しないような口先だけのきれいごとを主張するだけではゆめゆめ終わりにしない」ことを自分に課しています。ぜひ皆様も香西秀信氏の上記文章をもとに自分の意見を厳しく振り返って頂き、今後に生かしてもらえればうれしいです。
 今回の記事本文は以上です。

コーヒーブレイク

【今回の記事を公認会計士として監査先に対して行う改善提案で考える】
 今回の記事で言いたかったのは「誰もが反対しないような口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにするな」ということですが、これを私の仕事の分野で考えてみるとどうなるか。あくまでも一つの例として取り上げます。なお、会計領域などに関心のない人は、このコーナーは読み飛ばして構いません。
 私は公認会計士として財務諸表監査を専門に仕事をしています。監査の過程では、気がついた改善事項を監査先の経営者に伝えます。この改善事項を経営者に伝える時、経験値の低い会計士にありがちなのは次のような短絡的な「正論」だけを主張することです。
◆人員が足りないから人員をもっと採用すべきだ。
◆システムが脆弱だからシステムを強化すべきだ。
◆収益力が低いからこのままいけば減損だ。
 これらの主張そのものは正論ですから誰からも反論されることはありません。言ってみれば、会計士にとっては相手の弾丸が飛んでこないような場所から唱える安全な主張です。しかし、指摘を受ける経営者の方からすれば、「今更そんなことは会計士に言われなくても分かっている。問題はどうするかであって、それが簡単ではないから困っているんだよね」と感じています。だからこそ経営者は、心の中では「会計士のように正論だけ言っておけばいい人は気楽でいいよね」とか「会計士って経営のことは何にもわからず、ただの会計バカだよね」のように思っている可能性が高いと想像しています。
 そうならないためには、個別事象ごとに具体的な解決策(選択肢)・実行可能性・解決策の効果・解決策実施にあたっての前提条件や時間軸などを経営者と丁寧に議論することが大事です(なおこの点に関しては第96回目の記事(何かを提案するときに意識すべき4つのポイント)もぜひご参照ください)。それらを無視して一方的に「正論」だけの改善提案を主張してもプラスの効果を何も生み出しません。だから、私が上司としての立場にあるときには、部下に対してそのことを何度も何度も繰り返し強調したし、部下が主張する「正論」に対してあえて煽るような、時には無茶苦茶な反論もぶつけて部下の思考を揺さぶるようにもしていました。これもそれもすべて「プロなら口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにしてはいけない」ことを徹底するためです。

今回のまとめ

◆プロなら口先だけのきれいごとを主張するだけで終わりにしてはいけないと肝に銘じること

おすすめ図書

「反論の技術 その意義と訓練方法」(香西秀信)

 今回の記事本文で紹介した香西秀信氏の「反論の技術」という本は、第5回目の記事(議論の能力を高めるための反論の技術)のおすすめ図書としてすでにご紹介しています。同じ本を何度もおすすめ図書として挙げるのも気が引けるのですが、この本は本当に良書なのであえて今回も推薦する次第です。今回の記事本文で引用した箇所以外にも有益な指摘が満載です。機会があればぜひご一読ください。

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ハットさん
ハットさん

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